若君は、おひとりでその場にいつづけるのはつらくて、ご自分のお部屋に行かれた。
お胸が苦しくて横になっていらっしゃると、姫君の乗り物がこっそりとお屋敷を出ていく音がするの。
大宮様は若君を気遣って、
「こちらへいらっしゃい」
と女房から伝えさせなさったけれど、若君は寝たふりをなさっている。
涙が止まらず、一晩中嘆いて早朝にお屋敷をお出になる。
<朝になったらまた大宮様から呼ばれて、きっと離してくださらないだろう。女房たちに泣きはらした顔を見られるのも嫌だ。人目が気にならない東の院へ帰ろう>
とお思いになって、急いでご出発なさったの。
道に霜が降りている。
空は曇ってまだ暗い。
若君は心細く悩みつづけながら、
「寒々しい早朝に私の涙が雨のように降っている」
とつぶやかれた。
お胸が苦しくて横になっていらっしゃると、姫君の乗り物がこっそりとお屋敷を出ていく音がするの。
大宮様は若君を気遣って、
「こちらへいらっしゃい」
と女房から伝えさせなさったけれど、若君は寝たふりをなさっている。
涙が止まらず、一晩中嘆いて早朝にお屋敷をお出になる。
<朝になったらまた大宮様から呼ばれて、きっと離してくださらないだろう。女房たちに泣きはらした顔を見られるのも嫌だ。人目が気にならない東の院へ帰ろう>
とお思いになって、急いでご出発なさったの。
道に霜が降りている。
空は曇ってまだ暗い。
若君は心細く悩みつづけながら、
「寒々しい早朝に私の涙が雨のように降っている」
とつぶやかれた。



