姫君もまた、父君に若君とのご関係が知られてしまったことなどご存じない。
内大臣様がそっとお部屋を覗いてごらんになると、姫君はきょとんとなさっている。
「いくら幼いとはいえ、まさかそこまで浅はかだとは思っていませんでしたよ。しかし、そなたのような子を人並みの姫君にしようと考えていた私の方が浅はかだったのだろうか」
とおっしゃって、姫君の乳母をお責めになる。
「私や他の女房が若君をそそのかしたわけではございません。長年朝から晩までご一緒にお暮らしになるなかで、自然とご愛情が芽生えたものと存じます。大宮様もあえて引き離そうとはなさいませんでしたので、私どももそれに従っておりました。それでも一昨年からはお部屋が別々になって、おふたりがたまにお話しになるのもついたて越しでございました。若君はいかにも真面目でいらっしゃいましたから、まさか相思相愛になっておられるとは想像もいたしませんでした」
と必死に弁解する。
「もうよい、分かった。このことは誰にも言ってはならぬ。いつかは世間に知られてしまうだろうが、それまでは誰に聞かれても間違った噂だと言っておきなさい。姫君は近いうちに私の屋敷へ引き取ろう。大宮様がおおらかすぎでいらっしゃったことが恨めしい。そなたたちも、姫の結婚相手が若君ではつまらないと思うだろう」
内大臣様からひどいお叱りは受けずにすんだので、乳母たちはほっとした。
あわてて賛成する。
「もちろんでございます。姫君をお捨てになった母君や、そのご再婚相手のお耳にだって入ることでございますから。若君はどれほどご立派でもただの貴族、やはり姫様には入内していただきとう存じます」
と申し上げる。
内大臣様は姫君にもあらためてご注意なさるけれど、姫君は子どもっぽくお泣きになるだけなの。
どれほど伝わっているかも分からないから、
「若君と相思相愛であることが噂になれば、入内はできなくなる。どうしたら隠しとおせるだろうか」
と、内大臣様は乳母とご相談なさりながら、ひたすら大宮様を恨んでいらっしゃる。
内大臣様がそっとお部屋を覗いてごらんになると、姫君はきょとんとなさっている。
「いくら幼いとはいえ、まさかそこまで浅はかだとは思っていませんでしたよ。しかし、そなたのような子を人並みの姫君にしようと考えていた私の方が浅はかだったのだろうか」
とおっしゃって、姫君の乳母をお責めになる。
「私や他の女房が若君をそそのかしたわけではございません。長年朝から晩までご一緒にお暮らしになるなかで、自然とご愛情が芽生えたものと存じます。大宮様もあえて引き離そうとはなさいませんでしたので、私どももそれに従っておりました。それでも一昨年からはお部屋が別々になって、おふたりがたまにお話しになるのもついたて越しでございました。若君はいかにも真面目でいらっしゃいましたから、まさか相思相愛になっておられるとは想像もいたしませんでした」
と必死に弁解する。
「もうよい、分かった。このことは誰にも言ってはならぬ。いつかは世間に知られてしまうだろうが、それまでは誰に聞かれても間違った噂だと言っておきなさい。姫君は近いうちに私の屋敷へ引き取ろう。大宮様がおおらかすぎでいらっしゃったことが恨めしい。そなたたちも、姫の結婚相手が若君ではつまらないと思うだろう」
内大臣様からひどいお叱りは受けずにすんだので、乳母たちはほっとした。
あわてて賛成する。
「もちろんでございます。姫君をお捨てになった母君や、そのご再婚相手のお耳にだって入ることでございますから。若君はどれほどご立派でもただの貴族、やはり姫様には入内していただきとう存じます」
と申し上げる。
内大臣様は姫君にもあらためてご注意なさるけれど、姫君は子どもっぽくお泣きになるだけなの。
どれほど伝わっているかも分からないから、
「若君と相思相愛であることが噂になれば、入内はできなくなる。どうしたら隠しとおせるだろうか」
と、内大臣様は乳母とご相談なさりながら、ひたすら大宮様を恨んでいらっしゃる。



