宝石アモル〜呪いを祓う転校生〜

『違う! ブラックダイヤモンドはもうこのお店にはないわ!』
「え?」

 緊迫(きんぱく)した声に意識を集中させる。
 このお店にないってどういうこと?

『ついさっき、ほんの少し前に売られちゃったの!』
「売られた?」

「は? 売られたってどういうことだよ」

 心の中で会話することも忘れて声に出した私に、永遠は(まゆ)を寄せていぶかしむ。
 倉橋さんも部屋を出ていこうとするのを止めて私を見ているし、春花さんは緊張した顔をしつつだまって私の言葉を待っているみたいだった。

 そんな中、フッと頭の中に映像が流れる。
 見ている景色は多分さっき見たこの店の店舗内。
 視点の場所がショーケースっぽいから、きっとインペリアルトパーズの見た光景なんだと思う。

 インペリアルトパーズはなにか嫌な気配のする石と一緒にショーケースから出されてお客さんの前に出された。

「っ! え?」

 見えたものにドクンと心臓がはねる。
 嫌な予感にドクドクって鼓動(こどう)が早まった。

 なにか話しながら色んな宝石のついた装飾品を見ている女の人。
 連れの子どもと楽し気に買うジュエリーを選んでる。
 そして、彼女たちが選んだのは呪いがかかってる嫌な気配がしたブラックダイヤモンド。

 そのまま買われて行ってしまった。

「ウソ、でしょ?」
「要芽? どうした? 顔色良くないぞ?」

 私の顔を見て、心配そうに近づいて来る永遠。
 私はどうすればいいのかわからなくて、すがるように永遠を見た。

「どうしよう……ディコルに()かれたブラックダイヤモンドを買ったの、柚乃のお母さんだ!」