長谷川先生は連絡帳にも体育の授業中のことを書いていた。
 丁寧(ていねい)だけど、どことなくツンツンしている字で【家から本を持ってこないようお願いします】って書かれてる。

 お母さんには怒られそうだから見せたくなかったけれど、次の日お母さんの署名(しょめい)が無ければ絶対長谷川先生につっ込まれる!
 またあのズレてる眼鏡をクイッとしながら『お家の人に連絡帳を見せなかったんですか?』ってにらまれるのが目に浮かんじゃうよ。

 だから仕方なく見せたんだけど。

「はぁ……全くあなたって子は」

 お母さんはあきれてたけれど、思ったよりは怒らなかった。
 でも学校に家の本を持って行かないようにって約束させられちゃったよ。

「図書室の本でガマンしなさい」
「はーい……」

 了解の返事はしたけれど、私は不満たらたら。
 図書室には宝石に関係する本が二冊しかないんだもん。
 宝石にこだわらなきゃ鉱石全般(こうせきぜんぱん)の図鑑もあるけど……。

 それでもたった三冊しかないから、三年生になるころにはほとんど暗記しちゃうくらい読んじゃった。