朝から転校生が来たりとさわがしい一日だったけれど、なんとか平穏(へいおん)に終わった。
 私は帰りを急ぐかたわら柚乃に(ねん)を押すように声をかける。

「じゃあ私帰るけど、明後日の約束忘れてないよね?」
「忘れてないよ、まったく。ちゃんとお母さんにも許可(きょか)取ってるから大丈夫」

 ついつい何度も聞いちゃってるから柚乃はちょっとうんざり顔だ。
 でもずっと楽しみにしてたから仕方ないよね。

 実は今週の土曜日、つまり明後日なんだけれど。
 たくさんのジュエルを持っているっていう柚乃のお母さんのコレクションを見せてもらう約束をしてるんだ。

 柚乃のお父さんはけっこうな資産家(しさんか)で、柚乃のお母さんに記念日のたびにジュエリーをプレゼントしているんだって。
 その上、お母さんもよく宝石店に行っては気に入ったジュエリーを購入(こうにゅう)しているとか。
 つまり、私の大好きなキラキラ光る素敵な宝石たちがたくさん柚乃の家にはあるってこと!

 宝石は貴重(きちょう)なものだし、気軽に見せてとはさすがの私でも言えない。
 でもいつか見せて欲しいなって言ってたら柚乃がお母さんに許可を取ってくれたんだって!

「ぜひ見に来てね、だって」
「やった! 持つべきものはお金持ちの親友だよー」
「その言い方だとお金目当てに聞こえるよ? 気をつけな」

 柚乃の指摘(してき)に私はあわてて手のひらで口をおおう。
 一拍(いっぱく)置いてから、息を吐いて心を落ち着かせた。