宝石アモル〜呪いを祓う転校生〜

「素直にいうこと聞くと思う? 悪い感情(イラルム)を回収したあとはまた人の手に渡るようにしなきゃないんだけど」
「じゃあ(うば)うまでだ」

 緊迫(きんぱく)した空気にどうしようって気持ちがあせる。
 澪音くんも、柚乃と同じく私の宝石好きを知っても離れて行かなかった人だ。
 少なくとも友達とは思ってたし、せめて穏便(おんびん)にすませたい。

「澪音くん、そのネックレスをまた別の人の手に渡るようにしたら、またディコルは悪い感情を集めるために人をイライラさせたり悪い考えを持つよう誘導したりするんだよね? おねがい、()して? ディコルを(はら)わせて?」

 できればこんなふうに敵対したくないと思って言葉を(かさ)ねた。
 澪音くんはそんな私を見て「うーん」ってちょっと考えてからニヤッと笑う。

 ……なんか、ちょっと嫌な予感。

 思わず警戒すると、案の定澪音くんはとんでもないことを言ってきた。

「そうだなー。かなちゃんが僕に血をくれるならあげてもいいよ? 悪い感情(イラルム)があるからほとんど血は飲まないんだけど、こないだかなちゃんの血を味見(あじみ)したときすっごく美味(おい)しかったからさ」
「味見? いつ?」

 覚えがなくてビックリする。
 澪音くんが私の血をなめたり飲んだりしたこと、あったっけ?

「保健室で手当てしたときだよ。あのとき血を()いたガーゼちょっとなめてみたんだ」
「保健室って……」

 私がひじをすりむいて、たまたま保健室にいた澪音くんに手当てしてもらったときか。
 ……って、ほぼ初対面のときってことじゃない!