宝石アモル〜呪いを祓う転校生〜

 【アダマース】の闇の生き物は、ディコルが溜めた悪い感情を食べるって言うのは聞いていたけど……。

 実際に目にするとなんだかマズそうなものを食べているようにしか見えない。
 でも味わうように飲み込んだ澪音くんはとても幸せそうな顔で言った。

「ぅわ、うますぎ。これほどの悪い感情(イラルム)、なかなかありつけないよ」

 美味しいんだ……いや、それより。

「……イラルム?」

 聞きなれない言葉につい疑問符(ぎもんふ)をつけてくり返すと、澪音くんは「悪い感情って意味だよ」って教えてくれた。

 その悪い感情(イラルム)を食べたり、ディコルを呼び出したり。
 普通の人はしないことを続けざまにしている澪音くん。
 なのにそうやって教えてくれるところなんかはいつもと変わりなくて……。

 本当に石に呪いをかけるなんてひどいことをする組織の一員なの?

 って、まだ信じたくない気持ちが強い。
 そんな私とは逆に、澪音くんが【アダマース】だと理解している永遠は警戒したまま彼に話しかける。

「……とにかく、お前の目的はその集めた悪い感情(イラルム)を食べる事なんだろ? だったらもう用はすんだはずだ」

 澪音くんと私の間に立つ永遠は、ディコルを(はら)うためのムーンストーンのナイフを取り出し、もう片方の手をのばした。

「そのネックレスをよこせよ。ディコルを(はら)う」

 永遠の言葉に、澪音くんは軽く鼻を鳴らす。余裕そうに笑いながら、少し長めの金髪を払った。