叔母宮はすっかり老けこんでいらっしゃった。源氏の君の亡きご正妻の母君はこの宮の姉だけれど、あちらはまだ若々しさがおありになる。
こちらの宮はお声も低くかすれてしまって、何度も咳払いなさるご様子がいかにも年老いた人だった。
「かわいがってくださった桐壺の兄院がお亡くなりになって、何もかも心細く思っておりましたのに、式部卿の兄宮まで私を置いていってしまわれたのです。なかば死んだような状態で過ごしておりましたが、こうしてあなたがお見舞いくださって、なんとまぁうれしいこと」
ずいぶん老けこまれたと驚くお気持ちを抑えて、源氏の君はかしこまってお返事なさった。
「父院が亡くなられてからは、すべてが以前と違う世の中になってしまいました。私も身に覚えのない罪を着せられそうになりまして、田舎で謹慎することにしたのでございます。やっと都に戻ってまいりましたが、そうなると朝廷での仕事が忙しく、なかなかこちらに伺うことができませんでした。院の思い出話をぜひさせていただきたいと思いながらも」
「本当につらい世の中ですね。長生きは損だとばかり思っておりましたが、そのおかげであなたにもう一度お会いできたのですから、命に感謝しなければ。もし田舎へ行かれている間に死んでしまったら、あなたのことが気がかりで仕方なかったでしょう」
宮は震えながらお続けになる。
「美しく成長なさいましたね。初めてお会いしたとき、あなたはまだ元服前の子ども姿でいらっしゃいました。『世の中にこんなに美しい子が生まれるのか』と驚きましたよ。でも、それからますます美しくなっていかれたのですもの。今の帝があなたによく似ておいでだと女房たちは申しておりますけれど、それでもあなたほどではいらっしゃらないだろうと私は推測しています」
長々とおほめになった。
<貴婦人は面と向かって人をほめないものだけれど>
源氏の君は苦笑いしつつ、
「田舎へ行って苦しみましたから、私の見た目などすっかりやつれております。ご想像違いでございますよ。帝こそかつてないほどのお美しさだと拝見しております」
と謙遜なさる。
「ときどきあなたにお会いできたら、もっと寿命が延びるでしょうね。今日は老いたことも忘れ、世の中のつらいこともすべて消え去った心地がします」
宮はお泣きになった。
「姉宮がうらやましい。姉宮はあなたを娘婿になさって、孫君までいらっしゃるのでしょう。あなたと親しい親戚付き合いができるのだもの。兄宮もご生前にそう仰せでした」
源氏の君ははっとなさる。姫君は源氏の君にご冷淡だけれど、亡き父宮はむしろふたりの結婚を望まれていたらしい。
「そうなっていればどれほど幸せだっただろうと存じますが、亡き宮も姫君も、そこまで本気ではお考えでなかったようで」
恨めしそうにおっしゃった。
こちらの宮はお声も低くかすれてしまって、何度も咳払いなさるご様子がいかにも年老いた人だった。
「かわいがってくださった桐壺の兄院がお亡くなりになって、何もかも心細く思っておりましたのに、式部卿の兄宮まで私を置いていってしまわれたのです。なかば死んだような状態で過ごしておりましたが、こうしてあなたがお見舞いくださって、なんとまぁうれしいこと」
ずいぶん老けこまれたと驚くお気持ちを抑えて、源氏の君はかしこまってお返事なさった。
「父院が亡くなられてからは、すべてが以前と違う世の中になってしまいました。私も身に覚えのない罪を着せられそうになりまして、田舎で謹慎することにしたのでございます。やっと都に戻ってまいりましたが、そうなると朝廷での仕事が忙しく、なかなかこちらに伺うことができませんでした。院の思い出話をぜひさせていただきたいと思いながらも」
「本当につらい世の中ですね。長生きは損だとばかり思っておりましたが、そのおかげであなたにもう一度お会いできたのですから、命に感謝しなければ。もし田舎へ行かれている間に死んでしまったら、あなたのことが気がかりで仕方なかったでしょう」
宮は震えながらお続けになる。
「美しく成長なさいましたね。初めてお会いしたとき、あなたはまだ元服前の子ども姿でいらっしゃいました。『世の中にこんなに美しい子が生まれるのか』と驚きましたよ。でも、それからますます美しくなっていかれたのですもの。今の帝があなたによく似ておいでだと女房たちは申しておりますけれど、それでもあなたほどではいらっしゃらないだろうと私は推測しています」
長々とおほめになった。
<貴婦人は面と向かって人をほめないものだけれど>
源氏の君は苦笑いしつつ、
「田舎へ行って苦しみましたから、私の見た目などすっかりやつれております。ご想像違いでございますよ。帝こそかつてないほどのお美しさだと拝見しております」
と謙遜なさる。
「ときどきあなたにお会いできたら、もっと寿命が延びるでしょうね。今日は老いたことも忘れ、世の中のつらいこともすべて消え去った心地がします」
宮はお泣きになった。
「姉宮がうらやましい。姉宮はあなたを娘婿になさって、孫君までいらっしゃるのでしょう。あなたと親しい親戚付き合いができるのだもの。兄宮もご生前にそう仰せでした」
源氏の君ははっとなさる。姫君は源氏の君にご冷淡だけれど、亡き父宮はむしろふたりの結婚を望まれていたらしい。
「そうなっていればどれほど幸せだっただろうと存じますが、亡き宮も姫君も、そこまで本気ではお考えでなかったようで」
恨めしそうにおっしゃった。



