【手直し中】野いちご源氏物語 二〇 朝顔(あさがお)

 入道(にゅうどう)の宮(みや)につづいてお亡くなりになった式部卿(しきぶきょう)の宮(みや)には、斎院(さいいん)の姫君(ひめぎみ)がいらっしゃる。斎院とは、賀茂(かも)神社(じんじゃ)で神様にお仕えする役職のこと。父宮(ちちみや)がお亡くなりになったので、姫君はその役職をお下(お)りになった。
 源氏(げんじ)の君(きみ)とはいとこ同士で、お若いころからたまに文通をなさっている。かつて源氏の君は朝顔の花を添(そ)えて手紙をお送りになった。だからこの姫君のことは朝顔の君とお呼びいたしましょう。
 朝顔の君は源氏の君の浮気心をご存じだから、恋人になるおつもりはない。源氏の君は姫君に何度もお見舞いの手紙をお送りになる。しかし打ちとけた返事はいただけない。直接お訪ねしようと思い立たれた。

 姫君の実家の宮邸(みやてい)には、亡き父宮の妹宮(いもうとみや)も住んでいらっしゃる。
「私の叔母(おば)にあたる宮ですが、頼りになさっていた兄宮を亡くされてこれまで以上に寂(さび)しくお過ごしでしょうから、お見舞いに伺(うかが)おうと思います」
 紫の上にそう言い訳してお出かけになる。
 宮邸はあっという間に荒れてしまった感じがして、悲しくひっそりとしていた。