二条の院までの道中、源氏の君は明石の君のお気持ちを想像なさる。
<こんなにひどいことをしてしまって、きっと罰が当たるだろう>
とお思いになるの。
暗くなってから二条の院にご到着なさった。
乳母と女房は、
<なんと華やかなお屋敷だろう。田舎くさい自分が恥ずかしい>
と、めまいがする。
しかし姫君のお部屋に入ってみると、小さな家具がかわいらしくそろえてある。
乳母にもきちんと部屋が用意されていた。
姫君は乗り物のなかで眠ってしまわれていた。
乳母が抱き下ろしても、すぐにはお泣きにならない。
出されたお菓子をしばらく召し上がって、それからあたりを見回して、母君がいらっしゃらないことに気づかれたみたい。
泣き出しそうなお顔をなさったので、急いで乳母が呼ばれた。
乳母はなんとか姫君のご気分を紛らわしていたわ。
<明石の君にはかわいそうなことをしたが、これでやっと思いどおりに姫の世話ができる。姫を中宮にという計画が始まったのだ。しかし、紫の上に子どもができていれば、人から何も言われることのない完璧な子だったはずなのに>
と残念にお思いになる。
姫君は、しばらくは母君や親しい女房を探して泣かれることもあったけれど、そもそもおっとりしたご性格なので、紫の上によく懐いてにこにこしていらっしゃる。
<なんてかわいらしい宝物をいただいたのかしら>
と紫の上もうれしくお思いになる。
つききりで姫君のお相手をしていらっしゃるので、乳母も自然と紫の上に慣れていった。
袴着の儀式は、源氏の君としてはふつうのご準備をなさったおつもりだったけれど、やはりひと味もふた味も違って、見事な儀式なの。
お人形遊びのお道具のように、洒落てかわいらしい会場がつくられている。
お客様もたくさん。
まぁ、二条の院はもともとご来客が多いから、特にめずらしくはないけれど。
それよりも姫君のおかわいらしさよ。
お胸のあたりで袴の紐を結んだお姿が、これまで以上におかわいらしいの。
明石の君は姫君を思って嘆いていらっしゃった。
姫君を手放してしまったことを悔やんでおられる。
<源氏の君がめったにお越しくださらないことだけを嘆いていたころの方が、まだましだった>
とお思いになる。
あれほど「姫君を二条の院にお渡しした方がよい」と言っていた尼君も、実際に姫君がいらっしゃらなくなってからは、すっかり涙もろくなってしまわれた。
それでも、姫君が大切に育てられていらっしゃると聞くと、尼君はうれしく満足なさる。
袴着の儀式が行われると聞いて、何か贈り物をしたいと思われる。
でも、姫君には高貴な方々からたくさんお祝いが届くはず。
姫君宛てに贈るのは遠慮して、乳母や女房に、世にもめずらしい色合いの着物をお贈りになったわ。
源氏の君は、
<明石の君はさぞかし私が来るのを待っているだろう>
とお思いになるとお気の毒で、年末にこっそりとご訪問なさった。
その後もたびたびお手紙をお送りになる。
<大堰川の別荘はもともと寂しいところだが、姫がいなくては、もう心を慰める方法もないだろう>
と、心苦しく思っておられるのね。
紫の上は、源氏の君が熱心にお手紙をお書きになっていても、もう嫌なお顔はなさらない。
<私にはこんなにかわいらしい姫がいるのだから>
とお許しになっている。
<こんなにひどいことをしてしまって、きっと罰が当たるだろう>
とお思いになるの。
暗くなってから二条の院にご到着なさった。
乳母と女房は、
<なんと華やかなお屋敷だろう。田舎くさい自分が恥ずかしい>
と、めまいがする。
しかし姫君のお部屋に入ってみると、小さな家具がかわいらしくそろえてある。
乳母にもきちんと部屋が用意されていた。
姫君は乗り物のなかで眠ってしまわれていた。
乳母が抱き下ろしても、すぐにはお泣きにならない。
出されたお菓子をしばらく召し上がって、それからあたりを見回して、母君がいらっしゃらないことに気づかれたみたい。
泣き出しそうなお顔をなさったので、急いで乳母が呼ばれた。
乳母はなんとか姫君のご気分を紛らわしていたわ。
<明石の君にはかわいそうなことをしたが、これでやっと思いどおりに姫の世話ができる。姫を中宮にという計画が始まったのだ。しかし、紫の上に子どもができていれば、人から何も言われることのない完璧な子だったはずなのに>
と残念にお思いになる。
姫君は、しばらくは母君や親しい女房を探して泣かれることもあったけれど、そもそもおっとりしたご性格なので、紫の上によく懐いてにこにこしていらっしゃる。
<なんてかわいらしい宝物をいただいたのかしら>
と紫の上もうれしくお思いになる。
つききりで姫君のお相手をしていらっしゃるので、乳母も自然と紫の上に慣れていった。
袴着の儀式は、源氏の君としてはふつうのご準備をなさったおつもりだったけれど、やはりひと味もふた味も違って、見事な儀式なの。
お人形遊びのお道具のように、洒落てかわいらしい会場がつくられている。
お客様もたくさん。
まぁ、二条の院はもともとご来客が多いから、特にめずらしくはないけれど。
それよりも姫君のおかわいらしさよ。
お胸のあたりで袴の紐を結んだお姿が、これまで以上におかわいらしいの。
明石の君は姫君を思って嘆いていらっしゃった。
姫君を手放してしまったことを悔やんでおられる。
<源氏の君がめったにお越しくださらないことだけを嘆いていたころの方が、まだましだった>
とお思いになる。
あれほど「姫君を二条の院にお渡しした方がよい」と言っていた尼君も、実際に姫君がいらっしゃらなくなってからは、すっかり涙もろくなってしまわれた。
それでも、姫君が大切に育てられていらっしゃると聞くと、尼君はうれしく満足なさる。
袴着の儀式が行われると聞いて、何か贈り物をしたいと思われる。
でも、姫君には高貴な方々からたくさんお祝いが届くはず。
姫君宛てに贈るのは遠慮して、乳母や女房に、世にもめずらしい色合いの着物をお贈りになったわ。
源氏の君は、
<明石の君はさぞかし私が来るのを待っているだろう>
とお思いになるとお気の毒で、年末にこっそりとご訪問なさった。
その後もたびたびお手紙をお送りになる。
<大堰川の別荘はもともと寂しいところだが、姫がいなくては、もう心を慰める方法もないだろう>
と、心苦しく思っておられるのね。
紫の上は、源氏の君が熱心にお手紙をお書きになっていても、もう嫌なお顔はなさらない。
<私にはこんなにかわいらしい姫がいるのだから>
とお許しになっている。



