野いちご源氏物語 一九 薄雲(うすぐも)

源氏(げんじ)(きみ)は西の離れに行かれたけれど、すぐに(むらさき)(うえ)にお会いになる気にはなれない。
縁側(えんがわ)で横になって、女房(にょうぼう)たちに世間話をおさせになる。
ぼんやりと聞き流しながら、
<この年になっても難しい恋ばかりに夢中になってしまう。内大臣(ないだいじん)という高い身分にはふさわしくないことだ。しかし若いころだったら、女御(にょうご)様を無理やり手に入れていたかもしれない。少しは分別(ふんべつ)がついたということだろう>
とお思いになる。