野いちご源氏物語 一八 松風(まつかぜ)

源氏(げんじ)(きみ)はどうしても明石(あかし)(きみ)が気になって、人目(ひとめ)など気にせず会いにいこうと決意なさる。
(むらさき)(うえ)には、まだ明石の君が都に出てきていることをお話しになっていない。
人づてに聞くよりはとお思いになって、ご自分から打ち明けられた。

嵯峨(さが)のお寺は完成間近ですが、まだ仏像(ぶつぞう)(かざ)りつけができていませんから、ちょっとそちらの方面へ行ってきます。近くの(かつら)というところに建設中の別荘も、工事の進み具合を見てこなければなりません。ちょうどそのあたりに知り合いが地方から出てきていて、訪問する約束もしてありますから、気の毒にならないように行ってやらねばとも思っています。あれやこれやで二、三日はかかりそうです」
とおっしゃった。

紫の上は、
<知り合いとおっしゃるのは明石の君のことだろう。嵯峨のお寺だけでなく、桂に別荘を建てると突然おっしゃったのは、明石の君をお住まわせになるためだったのか>
と思い当たられて、
「長いご滞在になりそうですね。お帰りが待ち遠しいこと」
と不機嫌そうにお返事なさる。
<弱ったな。最近は私を女好きと言う人も少なくなって、すっかり真面目(まじめ)な男扱いされているというのに>
何やかやとご機嫌をおとりになっているうちに、日も高くなってしまったわ。