源氏の君は親しい家来にお命じになって、明石の君をこっそりお迎えにいかせなさった。
大堰川の別荘には、明石の君と姫君、それに明石の君の母君が引っ越されるの。
明石の君は、
<いよいよこの海辺ともお別れだ。おひとりで残る父君は、さぞや心細くていらっしゃるだろう。どうしてこのような悩み事がつづく身になってしまったのか。いっそ源氏の君のご愛情などいただかなければよかった>
と思い乱れてしまわれる。
入道は、
<源氏の君からお迎えが来て娘が都に上るとは、なんという幸運だろう。ついに長年の夢が叶うのだ。しかし、家族と別れ、姫に会えなくなってしまうことはあまりに悲しい>
と苦しんでいる。
明石の君の母君も、夫と離れることをつらく思っていらっしゃった。
<変わり者の夫ではあるし、仏教の修行でお堂に寝泊まりして留守がちだったけれど、それでも死ぬまでこの明石で一緒に暮らすつもりだったのに。こんなに突然離れ離れになるなんて>
と心細そうにしておられる。
母君が明石の君のために都から呼び寄せなさった若い女房たちは、都に戻れることをうれしく思っている。
でも、
<もうここに戻ってくることはないのかしら>
と、美しい海辺の景色を見て涙ぐんでもいるの。
大堰川の別荘には、明石の君と姫君、それに明石の君の母君が引っ越されるの。
明石の君は、
<いよいよこの海辺ともお別れだ。おひとりで残る父君は、さぞや心細くていらっしゃるだろう。どうしてこのような悩み事がつづく身になってしまったのか。いっそ源氏の君のご愛情などいただかなければよかった>
と思い乱れてしまわれる。
入道は、
<源氏の君からお迎えが来て娘が都に上るとは、なんという幸運だろう。ついに長年の夢が叶うのだ。しかし、家族と別れ、姫に会えなくなってしまうことはあまりに悲しい>
と苦しんでいる。
明石の君の母君も、夫と離れることをつらく思っていらっしゃった。
<変わり者の夫ではあるし、仏教の修行でお堂に寝泊まりして留守がちだったけれど、それでも死ぬまでこの明石で一緒に暮らすつもりだったのに。こんなに突然離れ離れになるなんて>
と心細そうにしておられる。
母君が明石の君のために都から呼び寄せなさった若い女房たちは、都に戻れることをうれしく思っている。
でも、
<もうここに戻ってくることはないのかしら>
と、美しい海辺の景色を見て涙ぐんでもいるの。



