野いちご源氏物語 一八 松風(まつかぜ)

四日目の早朝、二条(にじょう)(いん)にお着きになった。
少しご休憩(きゅうけい)なさってから、(むらさき)(うえ)山里(やまざと)であったことなどをお話しになる。
「二、三日と言って出かけたのに、約束を破ってしまいました。すまなく思っているのですよ。風流(ふうりゅう)好きな者たちがたくさんやって来て、なかなか帰らせてくれなかったのです。おかげで今朝は二日(ふつか)()いだ」
とおっしゃって、紫の上とご寝室にお入りになる。

女君(おんなぎみ)はいつものようにすねていらっしゃるけれど、源氏の君は真剣にお相手はなさらない。
「あちらは田舎(いなか)から出てきた身分の低い人ですよ。(みや)様の姫君(ひめぎみ)であるあなたが相手にする人ではありません。ご自分と比べることなどなさらないで、胸を張っていらっしゃい」
とお(さと)しになる。

日が暮れかけてきたころ、源氏の君は内裏(だいり)にお上がりになる。
その前に、紫の上に気づかれないよういそいでお手紙を書いていらっしゃるの。
でも、近くにいらっしゃる紫の上が気づかないはずがない。
明石(あかし)(きみ)へのお手紙ね。ずいぶん丁寧にお書きだわ>
と、さり()なくご覧になっているの。
源氏の君はこそこそとお使者(ししゃ)に何かおっしゃって、お手紙をお預けになる。
紫の上の女房(にょうぼう)たちは、いまいましく思っていたようね。