明石の君は、明石で源氏の君と過ごされた最後の夜を思い出しておられた。
源氏の君もまた、あのお別れの夜を思い出しながら帰っていらっしゃったの。
明石の君は思い出の琴を取りだして、源氏の君の前にお出しする。
<あぁ、今夜は弾かずにはいられない気分だ>
とお弾きになった。
琴の音色は変わらないまま。
おふたりはあの夜に戻ったような気がなさる。
「琴の音をお聞きになれば分かるでしょう。私はずっとあなたのことを思っていましたよ」
と源氏の君がおっしゃると、女君は、
「お心は変わらないというお約束を信じて、明石でも弾いておりました」
とお答えになる。
お似合いのおふたりでいらっしゃるけれど、明石の君のご身分を考えれば、信じられないほどのお幸せでしょうね。
明石の君はよりいっそう美しくなっておられるし、姫君は最高におかわいらしいし、源氏の君はお悩みになる。
<姫をこの先どうしたらよいだろう。世間に知らせないまま隠して育てるのはあまりに惜しい。いっそ二条の院に引き取って、紫の上に育てさせようか。立派な身分の養母が育てれば、世間から見下されることはない。しかし、明石の君はどう思うだろうか。いくら姫のためとはいえ、他人に渡すのはつらいだろう>
とお考えになると言い出すことはできず、涙ぐんで姫君をご覧になる。
姫君は人見知りするお年なので、初めのうちこそ父君を恥ずかしがっていらっしゃったけれど、だんだん慣れて、かわいらしくおしゃべりしたり笑ったりなさる。
まとわりつこうとなさる姫君を、源氏の君がお抱きになる。
その父娘のご様子は、幸福と幸運に包まれていらっしゃったわ。
源氏の君もまた、あのお別れの夜を思い出しながら帰っていらっしゃったの。
明石の君は思い出の琴を取りだして、源氏の君の前にお出しする。
<あぁ、今夜は弾かずにはいられない気分だ>
とお弾きになった。
琴の音色は変わらないまま。
おふたりはあの夜に戻ったような気がなさる。
「琴の音をお聞きになれば分かるでしょう。私はずっとあなたのことを思っていましたよ」
と源氏の君がおっしゃると、女君は、
「お心は変わらないというお約束を信じて、明石でも弾いておりました」
とお答えになる。
お似合いのおふたりでいらっしゃるけれど、明石の君のご身分を考えれば、信じられないほどのお幸せでしょうね。
明石の君はよりいっそう美しくなっておられるし、姫君は最高におかわいらしいし、源氏の君はお悩みになる。
<姫をこの先どうしたらよいだろう。世間に知らせないまま隠して育てるのはあまりに惜しい。いっそ二条の院に引き取って、紫の上に育てさせようか。立派な身分の養母が育てれば、世間から見下されることはない。しかし、明石の君はどう思うだろうか。いくら姫のためとはいえ、他人に渡すのはつらいだろう>
とお考えになると言い出すことはできず、涙ぐんで姫君をご覧になる。
姫君は人見知りするお年なので、初めのうちこそ父君を恥ずかしがっていらっしゃったけれど、だんだん慣れて、かわいらしくおしゃべりしたり笑ったりなさる。
まとわりつこうとなさる姫君を、源氏の君がお抱きになる。
その父娘のご様子は、幸福と幸運に包まれていらっしゃったわ。



