二匹の神使な妖獣からの溺愛が止まない

なんであたしがこんなに驚いているのか。



妖の中でも、あたしたちのように強い力を持つ高級の妖は、小さいときから人間の世界で暮らし、人間と同じ年月だけ学校に通うのが当たり前。



人間の世界で生活するための資金は、代々の土地や財産でどうにかなる。



蓮麻だって不動産王に近いくらい有り余る土地を持っているから、あたしは蓮麻のそれで養われている。



青蘭みたいな妖がいるなんて考えたこともなかった…。



「にしても、惺音ちゃんって本当に九尾狐なんだね。初めて見た」



青蘭があたしの九尾を見て軽くそう言う。



「父親は神使(しんし)の狐なんだっけ?」



神使――それは神の使い。



神様には基本的に二匹の神使と呼ばれる神の使いがいる。



稲荷神の神使は、ほら、稲荷神社とかでよく見ると思うけど、狐なの。



ちなみに、母親の神使のうちの一人が蓮麻。



だからあたしのことを小さいときから面倒見てくれてたってわけ。



青蘭が言うと、蓮麻が「コラッ」と気まずそうに男を制した。



あたしは苦笑する。



「いいよ、蓮麻。別に隠してることじゃないし」

「申し訳ありません…」



あたしは目の前の青蘭を見る。



「そう、稲荷神とその神使が禁断の恋に落ちて生まれたのがあたし。なかなかハードでしょ?」



そう言って笑う。



神と神使の恋は重大な禁忌なんだ。



「じゃあ…お父さんは今どうしてるの?」

「知らない。父親は神使契約を解除されて神々の世界から追放。今は行方知れず」

「ふーん。母親の稲荷神は罰されないのに地位の低い神使ばかり罰されるなんて理不尽な話だね」



それは…その通り。



あたしは曖昧にうなずいた。



「ま、とにかくよろしくね、惺音ちゃん」



そう言って青蘭は座ったままのあたしに手を差し出した。



あたしは渋々それを握った。