二匹の神使な妖獣からの溺愛が止まない

政庁からも門からも出ると、さっきまでの赤い世界とは一変、普通の景色に戻った。



「で、どこ!?」

「な、なにが…」

「稲穂を買い付けた店。どこなの!」



なんでこんな怒ってるの~…?



俺の尾が1本なくなっただけだよ~…。



俺は恐る恐るさっきの店を案内する。



さっきの店は、もう店じまいにすると言っていたにも関わらずまだ空いていた。



「ちょっとあんた!」



惺音ちゃんが、店の店主を怒鳴りつけた。



そして、稲穂を差し出す。



「これを鸞の尾と交換したって本当!?」

「へ、へえ…」

「あり得ない。稲穂3本なら1合にも満たない。売り物ってのも嘘でしょ。稲穂だけで売るわけがない。あとで屋敷から干魚を運ばせるからそれで手打ちにしなさい」



あまりの惺音ちゃんの剣幕に、店主はタジタジになった。



それでも譲らない店主に、惺音ちゃんはブチ切れ…。



手から炎を出した。



九尾狐の狐火…。




「私は稲荷神の子の九尾狐。本気になったらあんたなんて消し炭に出来るの。してほしい? 焼き蛙に」

「ひ、ひぃっ…」



店主は惺音ちゃんのあまりの怖さに慌てて土下座した。



それから奥から俺の尾を取って来る。



そしてそれを差し出しながら額を土間にこすりつけた。



「なにとぞお許しを…」

「分かればいいの」



惺音ちゃんはにっこり笑ってそれを取って俺に渡した。



「はい」

「惺音ちゃん…」

「青蘭の大事なものでしょ?」



俺は惺音ちゃんの顔をまじまじと見る。



惺音ちゃんってこんなに可愛かったっけ…。



俺のために本気で怒って、俺のことを仲間だと言って…。