次の残留霊は若い女性だった。
なぜか結婚式場にいる。
「冥界に帰る時間です。ご同行願えますか」
惺音ちゃんの言葉に、その女性はもともと青白い顔がもっと蒼白になった。
「明日の昼まで…待ってもらえませんか…」
「無理です。今すぐ戻ってください。本来昨日戻るべき身ですよ」
「そう…ですよね」
そう言ってうなだれた。
そしておとなしく俺たちに捕縛される。
俺たちに連れられながら、しきりに後ろの結婚式場を振り返った。
そして、「やっぱり…待ってください!」とその歩みを止めた。
「あたし、彼の結婚式をこの目で見るまであの世にはやっぱり戻れません…」
「彼…?」
俺たちは不思議そうな目をその人にそそぐ。
「このままだとあたし、あの世でも怨霊となってしまいます…」
その言葉に、惺音ちゃんと顔を見合わせた。
「どういうことですか…?」
俺はその人に聞いた。
その人から聞いた話は、こういうことだった。
「あたし…生前に付き合っていた恋人がいたんです。だけど病気で死別して…。彼のことを心の底から愛してました。お盆の時期には現世に戻れると聞いて、彼に一目でも会いたいと思いました。そこで、知ったんです。彼が明日別の人と結婚するって…」
俺たちは何も言えない。
ただその人の話を聞いてるだけ。
「…でも不思議と嫌じゃなかったんです。彼が幸せな新しい人生を歩むことができてると知って、素直に嬉しかった。だから、あたしは心の底から愛している彼の結婚式を一目見たかった。彼の新しい人生を応援したかった」
俺はその言葉に胸打たれた気がした。
特別な深い愛。
たとえ自分が相手じゃなくても、相手の幸せを心から願った深い愛…。
「惺音ちゃん」
「蘭」
「俺…この人の願いを成就させたい」
俺がそう言うと、惺音ちゃんはため息をついた。
そして優しい顔を俺に向ける。
「しょうがないね」
俺はその言葉にパァっと顔を輝かす。
「お叱りはあたしが受ける」
「惺音ちゃん…ありがとう」
その幽霊は信じられないって顔をしていて。
俺はその人に笑顔を向けた。
「必ず見届けさせます」
その人は笑顔になって俺たちに深々と頭を下げた。



