入道の宮様は、数人の女房だけを呼んで絵合を行わせなさったの。
呼ばれなかった女房たちは、自分も絵を拝見したかったとやきもきしている。
源氏の君はおもしろくお思いになって、
「どうせ勝負をするなら、帝の御前で絵合をなさっては」
と提案なさった。
源氏の君はこんなこともあろうかと、特によい絵はまだ梅壺に届けていらっしゃらなかったのよ。
「新しく描かせたのではおもしろくない。もとから持っているものだけで勝負しましょう」
と源氏の君はおっしゃったけれど、権中納言様だってお負けになるわけにはいかない。
こっそりと描かせていらっしゃったみたい。
上皇様は絵合が行われるとお聞きになって、斎宮の女御様を応援なさる。
お持ちの絵のなかから、由緒あるすばらしい作品をお贈りになったわ。
女御様へのご伝言で、
「もう内裏の外にいる身ですが、帝時代にあなたに抱いた恋心は今も忘れていませんよ」
とおっしゃった。
お返事をしないのも恐れ多いので、女御様は苦しく思いながらも、少しだけお書きになる。
「私が新斎宮として儀式に参列しましたころとは、内裏の雰囲気も違うような気がいたします。斎宮時代が懐かしく、恋しく思い出されます」
上皇様はこれをご覧になって、
<私がまだ帝でいて、姫宮は母が亡くなったことを理由に都に戻ってきたのだったら、源氏の君が何と言おうと妃にできただろうに>
とお思いになる。
姫宮を帝に差し上げてしまった源氏の君のことを、さぞや恨めしくお思いだったことでしょうね。
呼ばれなかった女房たちは、自分も絵を拝見したかったとやきもきしている。
源氏の君はおもしろくお思いになって、
「どうせ勝負をするなら、帝の御前で絵合をなさっては」
と提案なさった。
源氏の君はこんなこともあろうかと、特によい絵はまだ梅壺に届けていらっしゃらなかったのよ。
「新しく描かせたのではおもしろくない。もとから持っているものだけで勝負しましょう」
と源氏の君はおっしゃったけれど、権中納言様だってお負けになるわけにはいかない。
こっそりと描かせていらっしゃったみたい。
上皇様は絵合が行われるとお聞きになって、斎宮の女御様を応援なさる。
お持ちの絵のなかから、由緒あるすばらしい作品をお贈りになったわ。
女御様へのご伝言で、
「もう内裏の外にいる身ですが、帝時代にあなたに抱いた恋心は今も忘れていませんよ」
とおっしゃった。
お返事をしないのも恐れ多いので、女御様は苦しく思いながらも、少しだけお書きになる。
「私が新斎宮として儀式に参列しましたころとは、内裏の雰囲気も違うような気がいたします。斎宮時代が懐かしく、恋しく思い出されます」
上皇様はこれをご覧になって、
<私がまだ帝でいて、姫宮は母が亡くなったことを理由に都に戻ってきたのだったら、源氏の君が何と言おうと妃にできただろうに>
とお思いになる。
姫宮を帝に差し上げてしまった源氏の君のことを、さぞや恨めしくお思いだったことでしょうね。



