一戦目の勝負はつかないまま、二戦目が始まる。
今度は、左方が『伊勢物語』、右方が『正三位物語』。
これもまた難しい勝負ね。
右方の絵の方がにぎやかでおもしろそうだけれど、左方の女房だって負けてはいない。
「伊勢物語など古くさいと思われるかもしれませんが、伊勢の海以上に奥深い物語でございますよ。その奥深さを知ろうともしないで、切り捨ててしまってよいものでしょうか。業平の恋は、そちらで描かれるありきたりな恋とは格が違います」
と言う。
右方の女房は、
「正三位物語の女主人公は、父親の身分が低いにもかかわらず、女御の位にまで昇りつめたのです。海の底なんてはるか下でございますこと」
と皮肉で返した。
なかなか決着がつきそうにないので、今回は入道の宮様がお決めになる。
「右方の女主人公の気高さも捨てがたいけれど、やはり在原業平をおとしめることはできないでしょうね。古めかしく思われるのは、それだけ長く読まれてきたということだから」
こういう女性同士の論じ合いが続いて、やたらと時間がかかるわりに決着がつかないことも多いの。
今度は、左方が『伊勢物語』、右方が『正三位物語』。
これもまた難しい勝負ね。
右方の絵の方がにぎやかでおもしろそうだけれど、左方の女房だって負けてはいない。
「伊勢物語など古くさいと思われるかもしれませんが、伊勢の海以上に奥深い物語でございますよ。その奥深さを知ろうともしないで、切り捨ててしまってよいものでしょうか。業平の恋は、そちらで描かれるありきたりな恋とは格が違います」
と言う。
右方の女房は、
「正三位物語の女主人公は、父親の身分が低いにもかかわらず、女御の位にまで昇りつめたのです。海の底なんてはるか下でございますこと」
と皮肉で返した。
なかなか決着がつきそうにないので、今回は入道の宮様がお決めになる。
「右方の女主人公の気高さも捨てがたいけれど、やはり在原業平をおとしめることはできないでしょうね。古めかしく思われるのは、それだけ長く読まれてきたということだから」
こういう女性同士の論じ合いが続いて、やたらと時間がかかるわりに決着がつかないことも多いの。



