内裏に上がっておられた入道の宮様は、両方の絵をご覧になって、あることを思いつかれた。
梅壺を左方、弘徽殿を右方にして、左右で絵を戦わせる絵合よ。
左方は、源氏の君が由緒正しい物語の絵をそろえ、右方は、権中納言様が現代風の華やかな絵をおそろえになった。
少し見ただけだと右方が強そうな気がするけれど、さてどうなるかしら。
一戦目は、左方が『竹取物語』、右方が『宇津保物語』よ。
左方の女房は、
「竹取物語はありとあらゆる物語の祖先でございます。目新しいものではありませんが、かぐや姫はこの世に汚れず、月へと帰っていきました。立派な心がけと言えるでしょう。今どきの浮ついた方たちにはお分かりにならないかもしれませんが」
などと主張する。
右方の女房は、
「竹から生まれた姫なんて、身分が低うございます。それに、帝のお召しを断って月へ帰ることが、立派な心がけと言えるでしょうか。こちらの宇津保物語の主人公は、苦労して中国へ渡りました。音楽の才能をたよりに中国でも日本でも認められたのです。こういう人物こそ立派と言うべきでしょう。絵としても、中国の様子と日本の様子を比べて楽しむことができますから、とてもおもしろい作品でございます」
と反論したわ。
梅壺を左方、弘徽殿を右方にして、左右で絵を戦わせる絵合よ。
左方は、源氏の君が由緒正しい物語の絵をそろえ、右方は、権中納言様が現代風の華やかな絵をおそろえになった。
少し見ただけだと右方が強そうな気がするけれど、さてどうなるかしら。
一戦目は、左方が『竹取物語』、右方が『宇津保物語』よ。
左方の女房は、
「竹取物語はありとあらゆる物語の祖先でございます。目新しいものではありませんが、かぐや姫はこの世に汚れず、月へと帰っていきました。立派な心がけと言えるでしょう。今どきの浮ついた方たちにはお分かりにならないかもしれませんが」
などと主張する。
右方の女房は、
「竹から生まれた姫なんて、身分が低うございます。それに、帝のお召しを断って月へ帰ることが、立派な心がけと言えるでしょうか。こちらの宇津保物語の主人公は、苦労して中国へ渡りました。音楽の才能をたよりに中国でも日本でも認められたのです。こういう人物こそ立派と言うべきでしょう。絵としても、中国の様子と日本の様子を比べて楽しむことができますから、とてもおもしろい作品でございます」
と反論したわ。



