石山寺でのお参りが済んだころ、小君は源氏の君のお迎えにあがった。
「先日はあれから姉の供をして都へ戻りまして、あなた様のお参りのお供ができませんでした。お許しください」
源氏の君にお詫びを申し上げる。
<子どものころは我が子のようにかわいがっていただいた。貴族の一員にまでしてくださったご恩に背いて、私は須磨にお供もせず、姉の夫について常陸の国へ逃げてしまったのだ。裏切ったと思われても仕方がない>
源氏の君も多少は恨んでいらっしゃった。しかしそんな気配はお見せにならない。昔のようなかわいがり方ではないけれど、親しい家来のひとりとして扱われる。
「そなたの姉君にお手紙を差し上げたい」
そうおっしゃるので、
<とっくにお忘れになっていてもおかしくないのに、先日のご伝言だけでなく、お手紙までくださる。ずっと姉君を思っていてくださったのか>
と小君は感動する。
「先日は思わぬところでお会いしましたね。私は運命を感じましたが、あなたはいかがですか。前常陸の介が関所の番人のようにあなたを守っているのがうらやましい。嫉妬してしまいます」
こう書いた手紙を小君に渡しながら、源氏の君は苦笑なさる。
「ひさしぶりのお手紙だから気恥ずかしいな。しかし、あの人との苦しい恋は昨日のことのように思い出せるのだよ。あいかわらず浮ついた男だと、ますます嫌われてしまうだろうか」
小君は姉のところまで大切に持っていった。
「ぜひ返事をお書きになってください。裏切り者扱いされる覚悟をしておりましたが、これまでどおり優しくしてくださるのです。そのお心がありがたくて、いけないことだと知りながらもお預かりしてしまいました。女性は気が弱いものですから、こういう優しいお手紙につい返事をなさったところで、誰も悪く申しませんでしょう」
空蝉の君は源氏の君以上に気恥ずかしい。しかしめずらしい手紙を無視できなかった。
「運命のいたずらに嘆いてばかりでございますが、こうしてお手紙をいただきますと、なんだか夢のようで」
とお返事をした。
源氏の君にとっては忘れられない女君だから、その後もときどき手紙で口説こうとなさる。
「先日はあれから姉の供をして都へ戻りまして、あなた様のお参りのお供ができませんでした。お許しください」
源氏の君にお詫びを申し上げる。
<子どものころは我が子のようにかわいがっていただいた。貴族の一員にまでしてくださったご恩に背いて、私は須磨にお供もせず、姉の夫について常陸の国へ逃げてしまったのだ。裏切ったと思われても仕方がない>
源氏の君も多少は恨んでいらっしゃった。しかしそんな気配はお見せにならない。昔のようなかわいがり方ではないけれど、親しい家来のひとりとして扱われる。
「そなたの姉君にお手紙を差し上げたい」
そうおっしゃるので、
<とっくにお忘れになっていてもおかしくないのに、先日のご伝言だけでなく、お手紙までくださる。ずっと姉君を思っていてくださったのか>
と小君は感動する。
「先日は思わぬところでお会いしましたね。私は運命を感じましたが、あなたはいかがですか。前常陸の介が関所の番人のようにあなたを守っているのがうらやましい。嫉妬してしまいます」
こう書いた手紙を小君に渡しながら、源氏の君は苦笑なさる。
「ひさしぶりのお手紙だから気恥ずかしいな。しかし、あの人との苦しい恋は昨日のことのように思い出せるのだよ。あいかわらず浮ついた男だと、ますます嫌われてしまうだろうか」
小君は姉のところまで大切に持っていった。
「ぜひ返事をお書きになってください。裏切り者扱いされる覚悟をしておりましたが、これまでどおり優しくしてくださるのです。そのお心がありがたくて、いけないことだと知りながらもお預かりしてしまいました。女性は気が弱いものですから、こういう優しいお手紙につい返事をなさったところで、誰も悪く申しませんでしょう」
空蝉の君は源氏の君以上に気恥ずかしい。しかしめずらしい手紙を無視できなかった。
「運命のいたずらに嘆いてばかりでございますが、こうしてお手紙をいただきますと、なんだか夢のようで」
とお返事をした。
源氏の君にとっては忘れられない女君だから、その後もときどき手紙で口説こうとなさる。



