そんなに親しい仲でもないのに気取った乗り物でずかずかと入ってくる。姫君のご機嫌を取るために、旅行用の着物まで持参していた。
「今から九州へ向かいますから侍従のお迎えにまいりました。お見捨てするようで心苦しゅうございますけれど、姫君がお行きにならないのでしたら、せめて侍従だけはお許しくださいませね。それにしても、なんとお気の毒なご様子」
泣かんばかりなことを言いながら、この後の旅路のことしか考えていない。うっとりと幸せそうにしている。
「常陸の宮はご存命のころ、私のことを恥ずかしい義妹とお思いになって、親戚付き合いはしてくださらなかったのです。けれど私の方では宮家を敬う気持ちは持ちつづけておりましたよ。宮がお亡くなりになって、これであなた様とお近づきになれるかと思っていたところに、今度は源氏の君がお通いになりはじめたと聞きましてね。そんな恐れ多い姫君に馴れ馴れしくお手紙などお送りできませんから、またもや遠慮しているしかなかったのです。
それにしても、世の中に永遠なんてものはないのでしょうね。私など大した身分ではありませんから、まぁ気楽なものですけれど。宮家の姫君としてお父宮からあれほど大切にされていたあなた様が、まさかこんなにつらい境遇におなりとは。都にいるうちは安心でしたが、これからは九州ですから、お気の毒で申し訳なく思われます」
嫌味なのか同情なのか分からないことを言うけれど、姫君は打ちとけたお返事はなさらない。
「ご親切には感謝しますが、私は変わり者ですから、九州に行ってもご迷惑をおかけするだけでしょう。この荒れた屋敷とともに消えていこうと思っています」
とだけおっしゃった。
「たしかに今どきの人たちとはお考えが違うようですね。それでも若い女性が、こんなところで消えていこうだなんてお思いになってはいけませんよ。源氏の君がこのお屋敷の手入れをしてくださるというのなら話は別ですけれどね。源氏の君は、今はもう二条の院の女君だけに夢中でいらっしゃると聞きます。その人は兵部卿の宮の姫君だそうですね。他の恋人たちだって立派なご身分の美しい人たちでしょうに、どなたも見捨てられてしまったとか。ましてこんな荒れはてたお屋敷のあなた様を、わざわざ思い出して訪ねてくださるなんてありえませんよ」
姫君は、
<そのとおりだ>
と思うのも悲しくて、しくしくとお泣きになる。
「今から九州へ向かいますから侍従のお迎えにまいりました。お見捨てするようで心苦しゅうございますけれど、姫君がお行きにならないのでしたら、せめて侍従だけはお許しくださいませね。それにしても、なんとお気の毒なご様子」
泣かんばかりなことを言いながら、この後の旅路のことしか考えていない。うっとりと幸せそうにしている。
「常陸の宮はご存命のころ、私のことを恥ずかしい義妹とお思いになって、親戚付き合いはしてくださらなかったのです。けれど私の方では宮家を敬う気持ちは持ちつづけておりましたよ。宮がお亡くなりになって、これであなた様とお近づきになれるかと思っていたところに、今度は源氏の君がお通いになりはじめたと聞きましてね。そんな恐れ多い姫君に馴れ馴れしくお手紙などお送りできませんから、またもや遠慮しているしかなかったのです。
それにしても、世の中に永遠なんてものはないのでしょうね。私など大した身分ではありませんから、まぁ気楽なものですけれど。宮家の姫君としてお父宮からあれほど大切にされていたあなた様が、まさかこんなにつらい境遇におなりとは。都にいるうちは安心でしたが、これからは九州ですから、お気の毒で申し訳なく思われます」
嫌味なのか同情なのか分からないことを言うけれど、姫君は打ちとけたお返事はなさらない。
「ご親切には感謝しますが、私は変わり者ですから、九州に行ってもご迷惑をおかけするだけでしょう。この荒れた屋敷とともに消えていこうと思っています」
とだけおっしゃった。
「たしかに今どきの人たちとはお考えが違うようですね。それでも若い女性が、こんなところで消えていこうだなんてお思いになってはいけませんよ。源氏の君がこのお屋敷の手入れをしてくださるというのなら話は別ですけれどね。源氏の君は、今はもう二条の院の女君だけに夢中でいらっしゃると聞きます。その人は兵部卿の宮の姫君だそうですね。他の恋人たちだって立派なご身分の美しい人たちでしょうに、どなたも見捨てられてしまったとか。ましてこんな荒れはてたお屋敷のあなた様を、わざわざ思い出して訪ねてくださるなんてありえませんよ」
姫君は、
<そのとおりだ>
と思うのも悲しくて、しくしくとお泣きになる。



