源氏の君が都に戻られて三か月、冬が近づいていたころ。
だんだん寒くなってくると、頼れる人のいない姫君は悲しそうにお悩みになる。
そのころ源氏の君は、亡き上皇様のためのご法要を盛大になさっていた。
ご法要には優秀な僧侶だけをたくさんお集めになって、そのなかに姫君の兄君もいらっしゃった。
兄らしく姫君の面倒を見ることはなさらない方だけれど、僧侶としては優れておられるのよね。
ご法要から山のお寺に戻る途中で、兄君は姫君をご訪問なさった。
「源氏の君のご法要に参加してまいりましたよ。ここは極楽浄土かと思うような、見事な演出でした。あの方は仏様が人間に化けていらっしゃるのではないだろうか。本当に人間だとしたら、どうしてこんな薄汚れた世の中にお生まれになったのだろう」
と、言いたいことだけを言って、さっさとお帰りになってしまったの。
ご兄妹でしみじみと世間話をなさることもない。
お互いに変わり者でいらっしゃるから、見えているものや考えていることが、ふつうとは少し違っておられるのでしょうね。
おひとりになった姫君は、
<こんなに苦しんでいる私を放っておかれるなんて、仏様にしてはずいぶん冷たくていらっしゃる。もうこれ以上はお待ちしても無駄だろう>
と諦めはじめていらっしゃる。
そこへ叔母君が突然いらっしゃったの。
だんだん寒くなってくると、頼れる人のいない姫君は悲しそうにお悩みになる。
そのころ源氏の君は、亡き上皇様のためのご法要を盛大になさっていた。
ご法要には優秀な僧侶だけをたくさんお集めになって、そのなかに姫君の兄君もいらっしゃった。
兄らしく姫君の面倒を見ることはなさらない方だけれど、僧侶としては優れておられるのよね。
ご法要から山のお寺に戻る途中で、兄君は姫君をご訪問なさった。
「源氏の君のご法要に参加してまいりましたよ。ここは極楽浄土かと思うような、見事な演出でした。あの方は仏様が人間に化けていらっしゃるのではないだろうか。本当に人間だとしたら、どうしてこんな薄汚れた世の中にお生まれになったのだろう」
と、言いたいことだけを言って、さっさとお帰りになってしまったの。
ご兄妹でしみじみと世間話をなさることもない。
お互いに変わり者でいらっしゃるから、見えているものや考えていることが、ふつうとは少し違っておられるのでしょうね。
おひとりになった姫君は、
<こんなに苦しんでいる私を放っておかれるなんて、仏様にしてはずいぶん冷たくていらっしゃる。もうこれ以上はお待ちしても無駄だろう>
と諦めはじめていらっしゃる。
そこへ叔母君が突然いらっしゃったの。



