常陸の宮の姫君を覚えているかしら。そう、鼻の頭が赤い、ちょっと変わり者の姫君よ。
父宮が亡くなって心細くお暮らしだった十年ほど前に、源氏の君が通われはじめた。源氏の君は正直なところ姫君を気に入らなかったけれど、経済的な支援をしておあげになるようになった。
姫君はそれでなんとか生活を成り立たせていらっしゃったのに、源氏の君は突然須磨へ行き、連絡が途絶えてしまう。世の中が何もかも嫌になって都を離れたのだから、それほど愛していない女君のことを忘れてしまわれるのも仕方がないかもしれない。
しばらくは泣きながらそれなりの生活をしていた姫君だけれど、月日が経つほど貧しく寂しいありさまになっていかれた。
「あぁ、なんと残念な姫様の運命でしょう。せっかく源氏の君という神仏のような方が現れてくださったのに、政治家同士の揉め事のせいで、また頼る人のいない貧しいお暮らしに逆戻りですよ」
長年お仕えしている老女房がぐちぐちと嘆く。以前なら耐えられたことでも、なまじ源氏の君のおかげで人並みの生活をしてしまった後では、もう耐えられない。
源氏の君の恋人の屋敷ということで、悪くない女房たちも勤めていたのだけれど、貧乏暮らしに耐えられず出ていってしまう。年を取って亡くなる人もいて、だんだんお仕えしている人の数が少なくなってきた。
父宮が亡くなって心細くお暮らしだった十年ほど前に、源氏の君が通われはじめた。源氏の君は正直なところ姫君を気に入らなかったけれど、経済的な支援をしておあげになるようになった。
姫君はそれでなんとか生活を成り立たせていらっしゃったのに、源氏の君は突然須磨へ行き、連絡が途絶えてしまう。世の中が何もかも嫌になって都を離れたのだから、それほど愛していない女君のことを忘れてしまわれるのも仕方がないかもしれない。
しばらくは泣きながらそれなりの生活をしていた姫君だけれど、月日が経つほど貧しく寂しいありさまになっていかれた。
「あぁ、なんと残念な姫様の運命でしょう。せっかく源氏の君という神仏のような方が現れてくださったのに、政治家同士の揉め事のせいで、また頼る人のいない貧しいお暮らしに逆戻りですよ」
長年お仕えしている老女房がぐちぐちと嘆く。以前なら耐えられたことでも、なまじ源氏の君のおかげで人並みの生活をしてしまった後では、もう耐えられない。
源氏の君の恋人の屋敷ということで、悪くない女房たちも勤めていたのだけれど、貧乏暮らしに耐えられず出ていってしまう。年を取って亡くなる人もいて、だんだんお仕えしている人の数が少なくなってきた。



