源氏の君のところには、何かあるたびにいろいろな方から贈り物が届くのだけれど、源氏の君はそれを恋人たちにお配りになる。
常陸の宮様の姫君には、贈り物だけでなく、お屋敷の修理や手入れをする人を派遣なさった。
あっという間にお屋敷は整ったけれど、源氏の君はあれからご訪問なさらない。
お手紙だけは丁寧にお書きになる。
「二条の院の東隣に、私が亡き上皇様から相続した屋敷があるのですが、今その屋敷を改築しています。工事が終わったらそちらへお引越しください。それまでに、よい女童などを雇っておかれますように」
などと、雑用係の女童のことまで心配してお書きになった。
姫君の老女房たちは、これまでの貧しい暮らしががらりと変わっていくことによろこんでいる。
宮家の姫君らしい奥ゆかしさと美しい黒髪はお持ちだけれど、その他にこれといって優れたところのない姫君を、源氏の君はどうしてこんなに大切にされるのかしら。
そういう運命、と言うしかないわね。
貧しいお屋敷でのお勤めに耐えられなくなって辞めていった女房たちが、つぎつぎと戻ってくる。
やたらと威張っている中流貴族の屋敷なんかに勤めていた人たちは、この姫君のおっとりしたご性格に、
<やはりこちらの方が居心地がよい>
なんて思っていたみたい。
都に戻られた源氏の君は、苦労をされた分、思いやりがさらに深くなっていらっしゃる。
ご身分もいちだんと高くなられたから、
<あれほどご立派な方が、細やかにお世話をなさっているという常陸の宮様の姫君は、さぞや特別な女性でいらっしゃるのだろう。お屋敷の手入れをお手伝いすれば、源氏の君のお目に留まるかもしれない>
と期待する人がたくさんいるの。
そういう人たちが張りきって働くものだから、姫君のお屋敷はみるみる美しくなっていった。
常陸の宮様の姫君には、贈り物だけでなく、お屋敷の修理や手入れをする人を派遣なさった。
あっという間にお屋敷は整ったけれど、源氏の君はあれからご訪問なさらない。
お手紙だけは丁寧にお書きになる。
「二条の院の東隣に、私が亡き上皇様から相続した屋敷があるのですが、今その屋敷を改築しています。工事が終わったらそちらへお引越しください。それまでに、よい女童などを雇っておかれますように」
などと、雑用係の女童のことまで心配してお書きになった。
姫君の老女房たちは、これまでの貧しい暮らしががらりと変わっていくことによろこんでいる。
宮家の姫君らしい奥ゆかしさと美しい黒髪はお持ちだけれど、その他にこれといって優れたところのない姫君を、源氏の君はどうしてこんなに大切にされるのかしら。
そういう運命、と言うしかないわね。
貧しいお屋敷でのお勤めに耐えられなくなって辞めていった女房たちが、つぎつぎと戻ってくる。
やたらと威張っている中流貴族の屋敷なんかに勤めていた人たちは、この姫君のおっとりしたご性格に、
<やはりこちらの方が居心地がよい>
なんて思っていたみたい。
都に戻られた源氏の君は、苦労をされた分、思いやりがさらに深くなっていらっしゃる。
ご身分もいちだんと高くなられたから、
<あれほどご立派な方が、細やかにお世話をなさっているという常陸の宮様の姫君は、さぞや特別な女性でいらっしゃるのだろう。お屋敷の手入れをお手伝いすれば、源氏の君のお目に留まるかもしれない>
と期待する人がたくさんいるの。
そういう人たちが張りきって働くものだから、姫君のお屋敷はみるみる美しくなっていった。



