源氏の君は待ちくたびれていらっしゃった。
「ずいぶん時間がかかったではないか。どうだった。雑草がひどく茂って、昔の様子とはまったく違うが」
「侍従と呼ばれていた女房はおりませんでしたが、その叔母だという老女房に話を聞けました」
姫君は今もここで源氏の君をお待ちだとご報告する。
「こんな荒れたところで、どのようなお気持ちでお過ごしだったのだろう。そうとも知らず今までお訪ねしなかったとは」
生真面目な姫君だから、ふつうならとても我慢できないことを耐えていらっしゃったに違いなかった。同情してご自分の冷たさを反省なさる。
「さて、どうしたものか。もう忍び歩きも難しい身分になってしまったから、今夜を逃せば次はいつお訪ねできるか分からない」
源氏の君はお悩みになる。
<いきなり入っていくのは気が引ける。さりげない手紙を送ってからお訪ねしたいが、あの姫君はひどく引っ込み思案でいらっしゃったな。手紙の返事にまごついて惟光が困ることになるだろう>
惟光も同じように思ったらしい。
「お庭の雑草が露で濡れておりました。お着物が濡れないように、まずは誰かに露を払わせましょう」
動き出そうとする惟光を源氏の君はお止めになる。
「雑草を踏み分けてあなたのところへ参りますよ。私を待っていてくださったのですから」
独り言をつぶやいて乗り物から降りてしまわれた。惟光は露を払いながら源氏の君をご案内する。木立に溜まった雨粒が時雨のように落ちてくる。お供が源氏の君の後ろから傘をさしかけた。それでも着物の裾はひどく濡れてしまった。
姫君の部屋の前の庭に通じる門は、昔はかろうじてぼろぼろな状態で存在していたのに、今は跡形もなくなっている。
<こんなところから入っていくのを誰かに見られたら格好が悪い>
とお思いになるけれど、皮肉にも人気はないのが好都合だった。
「ずいぶん時間がかかったではないか。どうだった。雑草がひどく茂って、昔の様子とはまったく違うが」
「侍従と呼ばれていた女房はおりませんでしたが、その叔母だという老女房に話を聞けました」
姫君は今もここで源氏の君をお待ちだとご報告する。
「こんな荒れたところで、どのようなお気持ちでお過ごしだったのだろう。そうとも知らず今までお訪ねしなかったとは」
生真面目な姫君だから、ふつうならとても我慢できないことを耐えていらっしゃったに違いなかった。同情してご自分の冷たさを反省なさる。
「さて、どうしたものか。もう忍び歩きも難しい身分になってしまったから、今夜を逃せば次はいつお訪ねできるか分からない」
源氏の君はお悩みになる。
<いきなり入っていくのは気が引ける。さりげない手紙を送ってからお訪ねしたいが、あの姫君はひどく引っ込み思案でいらっしゃったな。手紙の返事にまごついて惟光が困ることになるだろう>
惟光も同じように思ったらしい。
「お庭の雑草が露で濡れておりました。お着物が濡れないように、まずは誰かに露を払わせましょう」
動き出そうとする惟光を源氏の君はお止めになる。
「雑草を踏み分けてあなたのところへ参りますよ。私を待っていてくださったのですから」
独り言をつぶやいて乗り物から降りてしまわれた。惟光は露を払いながら源氏の君をご案内する。木立に溜まった雨粒が時雨のように落ちてくる。お供が源氏の君の後ろから傘をさしかけた。それでも着物の裾はひどく濡れてしまった。
姫君の部屋の前の庭に通じる門は、昔はかろうじてぼろぼろな状態で存在していたのに、今は跡形もなくなっている。
<こんなところから入っていくのを誰かに見られたら格好が悪い>
とお思いになるけれど、皮肉にも人気はないのが好都合だった。



