惟光が庭に入っていく。物音のするところへ行って女房に話しかけたいけれど、どこからも人の気配がしない。
<やはり空き家か>
引きかえそうとしたとき、簾がかすかに動いた。
ぞっとしながらもそばへ寄って咳払いをしてみる。すると年老いた女の声で、
「誰じゃ」
と言うのが聞こえた。
「侍従と呼ばれていた女房にお会いしたいのですが」
惟光は名乗ってから取次ぎを頼む。
「侍従はもうここにはおりませんよ。一緒に働いていた私でよろしければお話を承りましょう」
その声に聞き覚えがあった。
<常陸の宮の姫君に仕えていた老女房だ>
宮邸にはまだ数人の女房が残って姫君にお仕えしている。もう他の屋敷では雇ってもらえないような老人ばかりだった。
普段はまったく来客がないのに、突然若くて優雅な貴族が現れたものだから、女房たちは混乱している。
<狐が化けているのではないか>
簾の近くにわらわらと集まってきた。
「失礼なことをお尋ねしますが、本当のところを教えていただきたいのです。姫君は今もお独りでいらっしゃいますか。もし心変わりなさっていないのなら、源氏の君はお訪ねしたいとおっしゃっています。どうご報告すればよいでしょう。正直にお話しください」
女房たちは年寄り臭く笑った。
「心変わりなどなさるものですか。こんな荒れはてたところでいつまでもお暮らしなのがその証拠ですよ。どれほど源氏の君に一途でいらっしゃったかは、このありさまを見て、うまくお伝えくださいませ。ずいぶん長生きした私でもめずらしく思うような、ひどいお暮らしぶりでしたよ」
話が長くなりそうなので惟光はあわてて止める。
「ええ、ではそのようにお伝えいたしましょう」
と言って、源氏の君の乗り物のところまで戻っていった。
<やはり空き家か>
引きかえそうとしたとき、簾がかすかに動いた。
ぞっとしながらもそばへ寄って咳払いをしてみる。すると年老いた女の声で、
「誰じゃ」
と言うのが聞こえた。
「侍従と呼ばれていた女房にお会いしたいのですが」
惟光は名乗ってから取次ぎを頼む。
「侍従はもうここにはおりませんよ。一緒に働いていた私でよろしければお話を承りましょう」
その声に聞き覚えがあった。
<常陸の宮の姫君に仕えていた老女房だ>
宮邸にはまだ数人の女房が残って姫君にお仕えしている。もう他の屋敷では雇ってもらえないような老人ばかりだった。
普段はまったく来客がないのに、突然若くて優雅な貴族が現れたものだから、女房たちは混乱している。
<狐が化けているのではないか>
簾の近くにわらわらと集まってきた。
「失礼なことをお尋ねしますが、本当のところを教えていただきたいのです。姫君は今もお独りでいらっしゃいますか。もし心変わりなさっていないのなら、源氏の君はお訪ねしたいとおっしゃっています。どうご報告すればよいでしょう。正直にお話しください」
女房たちは年寄り臭く笑った。
「心変わりなどなさるものですか。こんな荒れはてたところでいつまでもお暮らしなのがその証拠ですよ。どれほど源氏の君に一途でいらっしゃったかは、このありさまを見て、うまくお伝えくださいませ。ずいぶん長生きした私でもめずらしく思うような、ひどいお暮らしぶりでしたよ」
話が長くなりそうなので惟光はあわてて止める。
「ええ、ではそのようにお伝えいたしましょう」
と言って、源氏の君の乗り物のところまで戻っていった。



