野いちご源氏物語 一五 蓬生(よもぎう)

源氏(げんじ)(きみ)が都を離れていらっしゃった間、女君(おんなぎみ)たちはそれぞれ悲しくお思いだったけれど、経済的に問題のない方は、まだましだったわ。
たとえば(むらさき)(うえ)は、祖母君(そぼぎみ)から相続(そうぞく)なさったご自分の財産に加えて、源氏の君からお預かりになった資産(しさん)もあったの。
気持ちとしてはとても悲しいけれど、源氏の君とお手紙のやりとりをなさったり、お着物を仕立ててお届けしたりなされば、なぐさめられることも多かった。
問題は、経済的に困っていらっしゃる上に、源氏の君から忘れられていた女君よ。
そういう人は、ただひたすら貧しい生活に()えるしかなかったの。
さて、どんなふうに耐えていらっしゃったのかしら。
はたして源氏の君には思い出していただけたのかしら。