野いちご源氏物語 一四 澪標(みおつくし)

源氏(げんじ)(きみ)は、明石(あかし)姫君(ひめぎみ)生後(せいご)五十日のお祝いをしようとなさる。
<都で生まれていれば、盛大な祝賀(しゅくが)(かい)ができたのに。残念だ>
とお思いになる。
もし男のお子でいらっしゃったら、こんなふうにご熱心ではなかったはずよ。
(うらな)いどおりにいけば将来は中宮(ちゅうぐう)におなりになる姫君だから、特別に大切にしていらっしゃるの。

使者(ししゃ)は豪華なお祝いの贈り物と、実用的な品物、それから明石(あかし)(きみ)へのお手紙を持って明石に向かった。
源氏の君のご命令どおり、ちょうど生後五十日の日に到着したわ。
お手紙には、
「明石でもお祝いをしてくれているでしょうか。本当は都に呼んで祝ってやりたかった。姫の様子が気になって仕方がないのですよ。やはり明石にいては都合が悪い。姫を連れて都へ来る準備をしておくれ。何も心配はいらないから」
と書かれていた。