野いちご源氏物語 一四 澪標(みおつくし)

七、八日後、御息所(みやすんどころ)はお亡くなりになった。
<はかない世の中だ>
源氏(げんじ)(きみ)は心細くお思いになって、内裏(だいり)へも上がられない。
葬儀(そうぎ)の指示をする人がいないから、源氏の君があれこれとご指示なさる。
姫宮(ひめみや)斎宮(さいぐう)時代からお仕えしている役人が、なんとか事務仕事をしているだけの、頼りない()(さま)なの。

源氏の君は(みずか)六条(ろくじょう)のお屋敷へ出かけて、姫宮にお見舞いをおっしゃった。
姫宮は、
唯一(ゆいいつ)頼りにできた母を失い、途方(とほう)()れております」
と、女房(にょうぼう)を通じてお返事をなさる。
「御息所はご遺言(ゆいごん)で、姫宮の後見(こうけん)を私にお任せになりました。お心を開いていただければ幸いに存じます」
と源氏の君はおっしゃって、女房(にょうぼう)たちに指示をお出しになる。
とても頼りがいのあるご様子だった。

二条(にじょう)(いん)にお戻りになると、家来や女房たちを亡き御息所のお屋敷に派遣して、ご葬儀(そうぎ)のお手伝いをおさせになる。
源氏の君はどこにもお出かけにならず、御息所のためにお(きょう)を読んでいらっしゃった。
姫宮へはたびたびお見舞いのお手紙をお送りになる。
だんだん落ち着きを取り戻された姫宮は、ご自分でお返事をお書きになることもあったわ。
本当は<女房に代筆(だいひつ)させたい>と思われたのだけれど、乳母(めのと)が、
「源氏の君に代筆のお手紙などを差し上げては恐れ多うございます」
と申し上げたようね。