その秋、源氏の君は住吉大社にお参りに行かれた。須磨の嵐で命を助けていただいたお礼と、明石で明石の君に出会わせてくださったお礼、そして無事に都に戻ったご報告をなさる。たくさんの貴族たちが我も我もとお供をした。
ちょうど明石の君も船で住吉大社へ行こうとしていた。父入道は年に二回、娘にお参りをさせている。
女君を乗せた船が住吉大社の近くの岸に着こうとしたとき、陸で大騒ぎしている一行が見えた。神様に差し上げる宝物をたくさん運んでいる。神前で音楽を演奏する人たちも連れていた。
「どなたがお参りなさるのですか」
明石の君のお供は岸まで行って、一行の端にいた人に尋ねる。
「源氏の君ですよ。知らない人がいるとはね」
下働きの男だというのに晴れ晴れとした笑顔で言った。
明石の君は悔やむ。
<どうしてよりにもよって同じ日に来てしまったのだろう。船から華やかなご様子を拝見しているしかないのか。しょせん私はその程度の身分なのだ。いつも源氏の君のことを思っているけれど、それは虚しい一方通行で、お参りの予定さえ知ることのない間柄だ>
ひどく悲しくなって人知れず涙を流した。
女君の船から深緑色の松林が見える。木々の間に鮮やかな色の着物がちらちらしている。まるで花や紅葉を散らしたようだった。
見覚えのある家来たちもいた。明石では地味な格好をしていた人たちだから、打って変わった華やかな姿に驚く。着飾った一行に明石の君の供たちも見とれている。
源氏の君のお姿はもちろん見えない。それらしい乗り物が遠くにあるだけなのが、女君にはかえってつらい。
馬に乗ってお供をする少年に、たくさんの人がお仕えしていた。
<あれは亡きご正妻がお生みになった若君だろう。あんなに大切にされていらっしゃる。私や姫とは住む世界が違う方たちなのだ>
明石の君がつらくなっていると、陸の方はさらににぎやかになった。摂津の国の長官がやって来て、一行を出迎える。盛大な接待がされるのだろうと思うと、女君はもうここにいられない気分になった。
「源氏の君のご一行にまぎれてお参りしたところで、神様は私たちにお気づきくださらないだろう。とはいえせっかくここまで来たのだから、難波の岸に船を泊めて、お祓いだけは」
と予定を変更する。
ちょうど明石の君も船で住吉大社へ行こうとしていた。父入道は年に二回、娘にお参りをさせている。
女君を乗せた船が住吉大社の近くの岸に着こうとしたとき、陸で大騒ぎしている一行が見えた。神様に差し上げる宝物をたくさん運んでいる。神前で音楽を演奏する人たちも連れていた。
「どなたがお参りなさるのですか」
明石の君のお供は岸まで行って、一行の端にいた人に尋ねる。
「源氏の君ですよ。知らない人がいるとはね」
下働きの男だというのに晴れ晴れとした笑顔で言った。
明石の君は悔やむ。
<どうしてよりにもよって同じ日に来てしまったのだろう。船から華やかなご様子を拝見しているしかないのか。しょせん私はその程度の身分なのだ。いつも源氏の君のことを思っているけれど、それは虚しい一方通行で、お参りの予定さえ知ることのない間柄だ>
ひどく悲しくなって人知れず涙を流した。
女君の船から深緑色の松林が見える。木々の間に鮮やかな色の着物がちらちらしている。まるで花や紅葉を散らしたようだった。
見覚えのある家来たちもいた。明石では地味な格好をしていた人たちだから、打って変わった華やかな姿に驚く。着飾った一行に明石の君の供たちも見とれている。
源氏の君のお姿はもちろん見えない。それらしい乗り物が遠くにあるだけなのが、女君にはかえってつらい。
馬に乗ってお供をする少年に、たくさんの人がお仕えしていた。
<あれは亡きご正妻がお生みになった若君だろう。あんなに大切にされていらっしゃる。私や姫とは住む世界が違う方たちなのだ>
明石の君がつらくなっていると、陸の方はさらににぎやかになった。摂津の国の長官がやって来て、一行を出迎える。盛大な接待がされるのだろうと思うと、女君はもうここにいられない気分になった。
「源氏の君のご一行にまぎれてお参りしたところで、神様は私たちにお気づきくださらないだろう。とはいえせっかくここまで来たのだから、難波の岸に船を泊めて、お祓いだけは」
と予定を変更する。



