野いちご源氏物語 一四 澪標(みおつくし)

(むらさき)(うえ)父宮(ちちみや)でいらっしゃる兵部卿(ひょうぶきょう)(みや)様は、源氏(げんじ)(きみ)が都を離れておられる間、世間の目を恐れて源氏の君にご冷淡(れいたん)だった。
源氏の君はそのことを根に持っていらっしゃって、以前のように仲良くはなさらない。
だいたいのことには公平なご性格の源氏の君だけれど、兵部卿の宮様のことだけはどうしてもお許しになれないようね。
入道(にゅうどう)の宮様はこの宮様の(いもうと)(みや)でいらっしゃるから、入道の宮様もつらく思っておられたわ。

今、政治は源氏の君と太政(だいじょう)大臣(だいじん)様のおふたりが動かしていらっしゃる。
太政大臣様のご子息(しそく)で、源氏の君のご親友の(ごんの)中納言(ちゅうなごん)様は、姫君(ひめぎみ)(みかど)とご結婚させなさった。
祖父君(そふぎみ)である太政大臣様が熱心にお世話なさって、理想的な入内(じゅだい)儀式(ぎしき)が行われたわ。
帝はまだ十一歳だけれど、どのお(きさき)様が皇子(みこ)をお生みになるかしら。
姫君を入内させた父君(ちちぎみ)たちの権力争いが、いよいよ始まるのよ。

兵部卿の宮様も、姫君を入内させるつもりで大切に育てていらっしゃる。
この姫君は(むらさき)(うえ)の腹違いの妹君(いもうとぎみ)だから、源氏の君が応援なさってもよいはず。
でも、源氏の君は知らん顔をしていらっしゃったわ。

源氏の君には明石(あかし)姫君(ひめぎみ)がいらっしゃるけれど、まだ赤ちゃんだから入内はさせられない。
それに何より、帝は実は源氏の君のお子だから、ご自分の姫君と結婚させるわけにはいかないわよね。
源氏の君はこの権力争いに参加なさらないのか、それとも何か思いもよらない方法で参加なさるのか、さてどうなるのかしら。