しばらくして暮らしが落ち着くと、源氏の君は都に手紙を書いて、明石へ移ったことをお知らせになる。入道の宮にだけは、特別に詳しく、嵐の恐ろしかったことや命拾いなさったことなどもお書きになった。
嵐のなか届けられた紫の上からの手紙には、なかなか返事を書けずにいらっしゃる。少しお書きになっては涙があふれてしまう。
「この世のつらいことがすべて集まってきているのではないかと思うほど、つらいことが重なって起きますので、いっそ出家しようかとも悩みました。しかし、お別れした日のあなたの寂しそうなお顔を思い出すと、あなたを捨てることなどできません。どうしてももう一度、あなたと仲良く暮らしたいのです。そのためなら次々とつらいことが襲ってきても耐えられます。どうか私のことを思っていてください。須磨から明石へ移って、あなたからはさらに遠く離れてしまったけれど。
ここ最近本当にいろいろなことがあって、まだ夢のような気がしています。ずいぶん感情的なことを書いてしまったかもしれません」
乱れたお手紙になった。
<取りつくろいきれないご様子からして、やはり二条の院の女君は特別な方なのだろう>
家来たちはご同情しながら、それぞれ自分の家族や恋人に手紙を書く。
あれほど荒れていた空も、今はすっかり晴れわたっている。漁師たちにも活気が戻ってきた。
<須磨は漁師が少なく静かだった。須磨に比べて明石は人気が多すぎると思っていたが、これはこれでよいものだな。やはり人の気配がすると力づけられる>
源氏の君のお心も慰められる。
こうして書かれた何通もの手紙は、紫の上からの使者にお預けになる。危険を冒してやって来た使者は、ぐったりしたまま須磨に留まっていた。源氏の君はその人を明石まで呼んで手紙を預けると、ご褒美をたくさん持たせて都へお帰しになった。
嵐のなか届けられた紫の上からの手紙には、なかなか返事を書けずにいらっしゃる。少しお書きになっては涙があふれてしまう。
「この世のつらいことがすべて集まってきているのではないかと思うほど、つらいことが重なって起きますので、いっそ出家しようかとも悩みました。しかし、お別れした日のあなたの寂しそうなお顔を思い出すと、あなたを捨てることなどできません。どうしてももう一度、あなたと仲良く暮らしたいのです。そのためなら次々とつらいことが襲ってきても耐えられます。どうか私のことを思っていてください。須磨から明石へ移って、あなたからはさらに遠く離れてしまったけれど。
ここ最近本当にいろいろなことがあって、まだ夢のような気がしています。ずいぶん感情的なことを書いてしまったかもしれません」
乱れたお手紙になった。
<取りつくろいきれないご様子からして、やはり二条の院の女君は特別な方なのだろう>
家来たちはご同情しながら、それぞれ自分の家族や恋人に手紙を書く。
あれほど荒れていた空も、今はすっかり晴れわたっている。漁師たちにも活気が戻ってきた。
<須磨は漁師が少なく静かだった。須磨に比べて明石は人気が多すぎると思っていたが、これはこれでよいものだな。やはり人の気配がすると力づけられる>
源氏の君のお心も慰められる。
こうして書かれた何通もの手紙は、紫の上からの使者にお預けになる。危険を冒してやって来た使者は、ぐったりしたまま須磨に留まっていた。源氏の君はその人を明石まで呼んで手紙を預けると、ご褒美をたくさん持たせて都へお帰しになった。



