これが一番ひどいときで、夜になると風が落ち着き、雨もやんで星が見えてきた。
建物は一部が火事で燃えてしまっている上、室内も踏み荒らされている。お戻りになることはできない。
<住吉の海神様、竜王様、命をお助けいただきありがとうございました>
源氏の君はみすぼらしい小屋でお祈りになる。お疲れが出たのか物に寄りかかってうとうとしていらっしゃると、夢に亡き桐壺院が現れた。
「なぜこのようなみすぼらしいところにいるのだ。まもなく住吉の神様がそなたをお導きくださる。それに従って早く須磨から離れなさい」
そうおっしゃりながら、源氏の君のお手をお取りになる。
源氏の君は父院に会えたことに感動なさる。
「院がお亡くなりになってからというもの、私はつらいことばかりで、今はこんなに落ちぶれたありさまなのです」
不安と情けないお気持ちがあふれて、幼い子どものようにお泣きになった。
「それはいけない。守ってやれなくてすまなかったな。あの世に行ってすぐは何かと忙しくて、そなたを見守ることができなかったのだ。やっと落ち着いてふと見てみたら、ずいぶんと苦労しているではないか。あわてて飛んできたのだよ。
とにかく、住吉の神様に従っていればそなたは大丈夫だ。私はこれから都へ行く。ここまで来たついでに、帝に急ぎ申し上げねばならぬことがある」
院のお姿が消えはじめる。
「お待ちください、私もお供させてくださいませ」
お手を伸ばされたところで夢は覚めた。院がいらっしゃったあたりには月がきらきらと輝いていた。
夢だったとは信じられない。
<これまで夢に現れなさることはなかった。きっと私の命が危なくなっているのをご覧になって、助けに駆けつけてくださったのだろう>
ありがたくも頼もしくもお思いになる。
<もっとお話ししたかった。もう一度寝たらお会いできるだろうか>
試してごらんになっても、院は現れてくださらないまま明け方になってしまった。
建物は一部が火事で燃えてしまっている上、室内も踏み荒らされている。お戻りになることはできない。
<住吉の海神様、竜王様、命をお助けいただきありがとうございました>
源氏の君はみすぼらしい小屋でお祈りになる。お疲れが出たのか物に寄りかかってうとうとしていらっしゃると、夢に亡き桐壺院が現れた。
「なぜこのようなみすぼらしいところにいるのだ。まもなく住吉の神様がそなたをお導きくださる。それに従って早く須磨から離れなさい」
そうおっしゃりながら、源氏の君のお手をお取りになる。
源氏の君は父院に会えたことに感動なさる。
「院がお亡くなりになってからというもの、私はつらいことばかりで、今はこんなに落ちぶれたありさまなのです」
不安と情けないお気持ちがあふれて、幼い子どものようにお泣きになった。
「それはいけない。守ってやれなくてすまなかったな。あの世に行ってすぐは何かと忙しくて、そなたを見守ることができなかったのだ。やっと落ち着いてふと見てみたら、ずいぶんと苦労しているではないか。あわてて飛んできたのだよ。
とにかく、住吉の神様に従っていればそなたは大丈夫だ。私はこれから都へ行く。ここまで来たついでに、帝に急ぎ申し上げねばならぬことがある」
院のお姿が消えはじめる。
「お待ちください、私もお供させてくださいませ」
お手を伸ばされたところで夢は覚めた。院がいらっしゃったあたりには月がきらきらと輝いていた。
夢だったとは信じられない。
<これまで夢に現れなさることはなかった。きっと私の命が危なくなっているのをご覧になって、助けに駆けつけてくださったのだろう>
ありがたくも頼もしくもお思いになる。
<もっとお話ししたかった。もう一度寝たらお会いできるだろうか>
試してごらんになっても、院は現れてくださらないまま明け方になってしまった。



