<この世の終わりなのかもしれない>
翌朝からさらに風が強まって海は大荒れになった。雷もいっそうひどくなって、家来は泣きながら、
「どうしてこんなことになってしまうのだ。父や母にも会えず、愛しい妻子の顔も見ずに死ぬのか」
と嘆く。
<私は潔白だ。ここで我々が命を失う理由はない>
源氏の君はそうお考えになるけれど、周囲があまりに混乱している。住吉大社の神様を頼ることになさった。
「住吉の海神様、どうか海をお鎮めくださいませ。お鎮めいただけましたら、たくさんのお礼を差し上げましょう」
家来たちも源氏の君をお助けしたい一心で、神仏に祈りはじめる。
源氏の君はさらに、悪夢の原因と思われる、海底の竜王にもお願いなさる。するとますます雷が激しくなって、部屋の近くの渡り廊下に落ちた。炎を上げて廊下が焼け落ちていく。
もう誰も正気ではいられない。
部屋にも火が迫ってくるので、あわてて敷地の奥の方にある小屋へお逃げになる。台所仕事をする小屋なので、身分の低い召使いに混ざって、源氏の君も家来も震えていらっしゃった。
混乱と恐怖で泣き叫ぶ声は、雷の音にも負けないほど響きわたる。空は墨のように暗いままで日が暮れた。
翌朝からさらに風が強まって海は大荒れになった。雷もいっそうひどくなって、家来は泣きながら、
「どうしてこんなことになってしまうのだ。父や母にも会えず、愛しい妻子の顔も見ずに死ぬのか」
と嘆く。
<私は潔白だ。ここで我々が命を失う理由はない>
源氏の君はそうお考えになるけれど、周囲があまりに混乱している。住吉大社の神様を頼ることになさった。
「住吉の海神様、どうか海をお鎮めくださいませ。お鎮めいただけましたら、たくさんのお礼を差し上げましょう」
家来たちも源氏の君をお助けしたい一心で、神仏に祈りはじめる。
源氏の君はさらに、悪夢の原因と思われる、海底の竜王にもお願いなさる。するとますます雷が激しくなって、部屋の近くの渡り廊下に落ちた。炎を上げて廊下が焼け落ちていく。
もう誰も正気ではいられない。
部屋にも火が迫ってくるので、あわてて敷地の奥の方にある小屋へお逃げになる。台所仕事をする小屋なので、身分の低い召使いに混ざって、源氏の君も家来も震えていらっしゃった。
混乱と恐怖で泣き叫ぶ声は、雷の音にも負けないほど響きわたる。空は墨のように暗いままで日が暮れた。



