源氏の君は船で難波というところにお着きになった。
上陸して乗り物にお乗り換えになると、ここから都まではあと少しよ。
<住吉大社が近いから、あの嵐の夜を無事に生き延びられたお礼を申し上げたい>
とお思いになるけれど、今回はこのまま都へ入ることになさった。
その代わりに使者をお出しになって、
「また改めてお礼を申し上げにまいります」
とお伝えになったわ。
二条の院にお帰りになると、留守番をしていた家来とお供をしていた家来が、にぎやかに再会をよろこびあう。
紫の上は、<もう生きていても甲斐がない>とまで思いつめておられたから、源氏の君のお帰りをどれほどうれしくお思いになったことかしら。
源氏の君が急いで紫の上の離れに行かれると、女君はたいそう美しく成長しておられた。
二年以上も離れ離れでいらっしゃったお苦しみで、お髪は少し量が減ってしまったけれど、それがかえってすっきりとしてお美しい。
<あぁ、これからは毎日会えるのだ>
と源氏の君は感動なさる。
でもそのすぐ後に、
<明石の君は見捨てられたと思って苦しんでいるだろう>
とお思いになるのだから、恋愛関係で悩みつづける運命でいらっしゃるのでしょうね。
源氏の君はそのまま、明石の君のことを紫の上にお話しになる。
<ずいぶんしみじみと思い出しながら話しておられる。ちょっとした浮気などではないのだ>
と紫の上は気づかれたけれど、はっきりとご不満はおっしゃらない。
「浮気などしないと神様に誓ってご出発なさいましたでしょう。その罰が当たらないとよろしいのですけれど」
と冗談めかしてお恨みになるの。
そのご様子が、源氏の君にはかわいらしくてたまらない。
見れば見るほど紫の上が愛しくなっていかれて、
<二年以上も平気で離れていられたのが不思議なほどだ。右大臣め、もう亡くなったと聞いたが、なんとつらい目に遭わせてくれたものよ>
と、ふつふつとお怒りが湧く。
源氏の君をお許しになった帝は、目のご病気はあいかわらずでいらっしゃるけれど、源氏の君が無事にお戻りになったことに一安心しておられた。
源氏の君を元の位に復帰させて、「権大納言」という高いお役職をお与えになる。
源氏の君の家来たちで、前右大臣様にお役職を取り上げられてしまった人たちも、元のお役職に戻していただいた。
枯れ木に花が咲いたようで、とてもおめでたい雰囲気だったわ。
帝からお召しがあったので、源氏の君は内裏に上がられた。
堂々とご立派な源氏の君を拝見して、女房たちは、
「こんなにご立派な方が、どうやって田舎暮らしをなさっていたのかしら」
と不思議がっている。
年老いた女房は源氏の君をお小さいころから存じ上げているから、もう泣きながら感動しているの。
帝は、
<ひさしぶりに源氏の君と対面するのだから>
と、念入りに身づくろいして出ていらっしゃった。
ご病状はあいかわらず重いけれど、ここ一日二日は少しご気分がおよろしいの。
静かに話し合われるうちに夜になった。
帝は、亡き上皇様のご遺言を破って、源氏の君を都から追い出したことを後悔していらっしゃる。
ご病気のせいで余計に心細くお思いになるみたい。
「近ごろでは音楽会もしていないのです。病が重くてね。あなたの演奏を最後に聞いたのはいつだっただろう。ずいぶん長い時間が経ってしまいました」
とおっしゃる。
源氏の君が、
「寂しい海辺で二年以上過ごしました」
とお返事なさると、帝は申し訳なくお思いになる。
「あなたにはつらい思いをさせてしまった。不甲斐ない私を許しておくれ」
と、どこまでもお優しく、品良くおっしゃるの。
源氏の君は、東宮様のところにもご挨拶に上がられた。
都をお離れになったときは幼さが残っておられたけれど、すっかり少年らしくご成長なさっている。
ひさしぶりに源氏の君に会えたことをよろこんでいらっしゃるので、源氏の君は愛しい気持ちでいっぱいになられる。
ご学問もよくおできになるから、
<いつ帝におなりになっても大丈夫だろう。ご立派で賢い帝になられるはずだ>
と源氏の君はほほえんでおられたわ。
入道の宮様へのご挨拶は、もう少しお気持ちを落ち着かせてから行かれた。
感動的な再会だったことでしょうね。
花散里の君にはお手紙で都に戻ったことをお知らせになった。
その後もたまにお手紙はお送りになるけれど、ご訪問はなさらないので、女君はかえってつらくなっていらっしゃったわ。
上陸して乗り物にお乗り換えになると、ここから都まではあと少しよ。
<住吉大社が近いから、あの嵐の夜を無事に生き延びられたお礼を申し上げたい>
とお思いになるけれど、今回はこのまま都へ入ることになさった。
その代わりに使者をお出しになって、
「また改めてお礼を申し上げにまいります」
とお伝えになったわ。
二条の院にお帰りになると、留守番をしていた家来とお供をしていた家来が、にぎやかに再会をよろこびあう。
紫の上は、<もう生きていても甲斐がない>とまで思いつめておられたから、源氏の君のお帰りをどれほどうれしくお思いになったことかしら。
源氏の君が急いで紫の上の離れに行かれると、女君はたいそう美しく成長しておられた。
二年以上も離れ離れでいらっしゃったお苦しみで、お髪は少し量が減ってしまったけれど、それがかえってすっきりとしてお美しい。
<あぁ、これからは毎日会えるのだ>
と源氏の君は感動なさる。
でもそのすぐ後に、
<明石の君は見捨てられたと思って苦しんでいるだろう>
とお思いになるのだから、恋愛関係で悩みつづける運命でいらっしゃるのでしょうね。
源氏の君はそのまま、明石の君のことを紫の上にお話しになる。
<ずいぶんしみじみと思い出しながら話しておられる。ちょっとした浮気などではないのだ>
と紫の上は気づかれたけれど、はっきりとご不満はおっしゃらない。
「浮気などしないと神様に誓ってご出発なさいましたでしょう。その罰が当たらないとよろしいのですけれど」
と冗談めかしてお恨みになるの。
そのご様子が、源氏の君にはかわいらしくてたまらない。
見れば見るほど紫の上が愛しくなっていかれて、
<二年以上も平気で離れていられたのが不思議なほどだ。右大臣め、もう亡くなったと聞いたが、なんとつらい目に遭わせてくれたものよ>
と、ふつふつとお怒りが湧く。
源氏の君をお許しになった帝は、目のご病気はあいかわらずでいらっしゃるけれど、源氏の君が無事にお戻りになったことに一安心しておられた。
源氏の君を元の位に復帰させて、「権大納言」という高いお役職をお与えになる。
源氏の君の家来たちで、前右大臣様にお役職を取り上げられてしまった人たちも、元のお役職に戻していただいた。
枯れ木に花が咲いたようで、とてもおめでたい雰囲気だったわ。
帝からお召しがあったので、源氏の君は内裏に上がられた。
堂々とご立派な源氏の君を拝見して、女房たちは、
「こんなにご立派な方が、どうやって田舎暮らしをなさっていたのかしら」
と不思議がっている。
年老いた女房は源氏の君をお小さいころから存じ上げているから、もう泣きながら感動しているの。
帝は、
<ひさしぶりに源氏の君と対面するのだから>
と、念入りに身づくろいして出ていらっしゃった。
ご病状はあいかわらず重いけれど、ここ一日二日は少しご気分がおよろしいの。
静かに話し合われるうちに夜になった。
帝は、亡き上皇様のご遺言を破って、源氏の君を都から追い出したことを後悔していらっしゃる。
ご病気のせいで余計に心細くお思いになるみたい。
「近ごろでは音楽会もしていないのです。病が重くてね。あなたの演奏を最後に聞いたのはいつだっただろう。ずいぶん長い時間が経ってしまいました」
とおっしゃる。
源氏の君が、
「寂しい海辺で二年以上過ごしました」
とお返事なさると、帝は申し訳なくお思いになる。
「あなたにはつらい思いをさせてしまった。不甲斐ない私を許しておくれ」
と、どこまでもお優しく、品良くおっしゃるの。
源氏の君は、東宮様のところにもご挨拶に上がられた。
都をお離れになったときは幼さが残っておられたけれど、すっかり少年らしくご成長なさっている。
ひさしぶりに源氏の君に会えたことをよろこんでいらっしゃるので、源氏の君は愛しい気持ちでいっぱいになられる。
ご学問もよくおできになるから、
<いつ帝におなりになっても大丈夫だろう。ご立派で賢い帝になられるはずだ>
と源氏の君はほほえんでおられたわ。
入道の宮様へのご挨拶は、もう少しお気持ちを落ち着かせてから行かれた。
感動的な再会だったことでしょうね。
花散里の君にはお手紙で都に戻ったことをお知らせになった。
その後もたまにお手紙はお送りになるけれど、ご訪問はなさらないので、女君はかえってつらくなっていらっしゃったわ。



