娘は、といつまでもお呼びするのは申し訳ないわね。
源氏の君の恋人になられたのだから、「明石の君」とお呼びいたしましょう。
明石の君は、源氏の君のご態度が予想どおりになってしまって、
<もはや海に身を投げて死のうか>
と思いつめていらっしゃる。
<父君も母君ももう先の長いご年齢ではないというのに、そんな両親に頼りきって、ただなんとなく毎日を過ごしていたころはよかった。幸運が訪れると信じていたわけではないけれど、とくに悩みもなく穏やかだった。恋愛がこれほど悩み苦しむものだとは、想像していた以上だ>
と悲しんでいるけれど、源氏の君にはそれをお見せにならない。
穏やかで感じのよい態度をとりつづけていらっしゃるの。
源氏の君は、
<いじらしい人だ。たしかに愛情は深まっていくけれど、都で私の帰りを待っている紫の上を不安にさせるのは心苦しい>
と、ほとんどの夜を浜の館でおひとりで過ごされる。
紫の上に少しでも安心していただこうと、絵を描いて二条の院にお送りになるの。
絵のとなりにはそのとき感じたことをお書きになって、
「あなたも思いついたことなどを書きこんで、私のところへ送り返してください」
とお願いなさった。
感動的なやりとりが行われていたわ。
紫の上も、源氏の君を思い出して寂しくなったときなどに、絵をお描きになるようになった。
お身の回りのことを絵日記のように描いていらっしゃる。
そんなふうになぐさめあっておられるおふたりは、これからどうなっていかれるのかしら。
源氏の君の恋人になられたのだから、「明石の君」とお呼びいたしましょう。
明石の君は、源氏の君のご態度が予想どおりになってしまって、
<もはや海に身を投げて死のうか>
と思いつめていらっしゃる。
<父君も母君ももう先の長いご年齢ではないというのに、そんな両親に頼りきって、ただなんとなく毎日を過ごしていたころはよかった。幸運が訪れると信じていたわけではないけれど、とくに悩みもなく穏やかだった。恋愛がこれほど悩み苦しむものだとは、想像していた以上だ>
と悲しんでいるけれど、源氏の君にはそれをお見せにならない。
穏やかで感じのよい態度をとりつづけていらっしゃるの。
源氏の君は、
<いじらしい人だ。たしかに愛情は深まっていくけれど、都で私の帰りを待っている紫の上を不安にさせるのは心苦しい>
と、ほとんどの夜を浜の館でおひとりで過ごされる。
紫の上に少しでも安心していただこうと、絵を描いて二条の院にお送りになるの。
絵のとなりにはそのとき感じたことをお書きになって、
「あなたも思いついたことなどを書きこんで、私のところへ送り返してください」
とお願いなさった。
感動的なやりとりが行われていたわ。
紫の上も、源氏の君を思い出して寂しくなったときなどに、絵をお描きになるようになった。
お身の回りのことを絵日記のように描いていらっしゃる。
そんなふうになぐさめあっておられるおふたりは、これからどうなっていかれるのかしら。



