あのとんでもない大嵐は三月のことだったけれど、それから都では不吉なことが続いている。
まず、大嵐が収まる直前、帝は亡き桐壺院の夢をご覧になった。院は内裏の庭に立って、たいそうお怒りの様子で帝をおにらみになった。帝が恐縮なさると、院は、
「あれほど源氏の君を大切にせよと遺言したではないか」
といまいましげにおっしゃった。
源氏の君も同じ夜、院の夢をご覧になっている。
「私はこれから都へ行く。ここまで来たついでに、帝に急ぎ申し上げねばならぬことがある」
院はそうおっしゃって源氏の君の夢から姿をお消しになったのだった。あの後内裏に飛んでいって、帝の夢にお出になったらしい。
<父院はおそろしくお怒りだった。やはりご遺言を破ってはいけなかったのだ>
帝はぞっとして母皇太后に報告なさった。
「何をおっしゃいますか。嵐が続いてお心が不安定なのでしょう。それが夢に表れただけのことですよ。どっしり構えていらっしゃいませ。帝ともあろうお方が動揺する姿をお見せになってはいけません」
皇太后はきっぱり否定なさったけれど、帝はただの夢とは思われない。たしかに院と目が合った。その証拠に、あれ以来お目の調子が悪い。
ひどくお苦しみになるので回復のお祈りが行われる。そんななか、母方の祖父の大臣がお亡くなりになった。年齢的におかしくはなかったけれど、その後もいろいろと悪いことが続いて、ついに皇太后まで原因不明の病気になってしまわれる。
<さすがにこれは異常だ>
帝はお悟りになる。
「罪のない源氏の君を都から追放したせいで桐壺院がお怒りなのです。すぐに源氏の君を都に呼び戻し、元の位に復帰させましょう」
と皇太后に何度もおっしゃった。
「そんなことをすれば世間が批判いたします。帝はご決定を軽々しく変更なさってはいけません。源氏の君は罪の自覚があって自分から都を離れたのです。そういう場合は三年間は都に戻してはならないと、法律で決められています。法律を破った帝だと百年先まで言い伝えられてしまいますよ」
帝が母皇太后に遠慮なさっている間に月日が経っていく。ふたりのご病気は重くなる一方だった。
まず、大嵐が収まる直前、帝は亡き桐壺院の夢をご覧になった。院は内裏の庭に立って、たいそうお怒りの様子で帝をおにらみになった。帝が恐縮なさると、院は、
「あれほど源氏の君を大切にせよと遺言したではないか」
といまいましげにおっしゃった。
源氏の君も同じ夜、院の夢をご覧になっている。
「私はこれから都へ行く。ここまで来たついでに、帝に急ぎ申し上げねばならぬことがある」
院はそうおっしゃって源氏の君の夢から姿をお消しになったのだった。あの後内裏に飛んでいって、帝の夢にお出になったらしい。
<父院はおそろしくお怒りだった。やはりご遺言を破ってはいけなかったのだ>
帝はぞっとして母皇太后に報告なさった。
「何をおっしゃいますか。嵐が続いてお心が不安定なのでしょう。それが夢に表れただけのことですよ。どっしり構えていらっしゃいませ。帝ともあろうお方が動揺する姿をお見せになってはいけません」
皇太后はきっぱり否定なさったけれど、帝はただの夢とは思われない。たしかに院と目が合った。その証拠に、あれ以来お目の調子が悪い。
ひどくお苦しみになるので回復のお祈りが行われる。そんななか、母方の祖父の大臣がお亡くなりになった。年齢的におかしくはなかったけれど、その後もいろいろと悪いことが続いて、ついに皇太后まで原因不明の病気になってしまわれる。
<さすがにこれは異常だ>
帝はお悟りになる。
「罪のない源氏の君を都から追放したせいで桐壺院がお怒りなのです。すぐに源氏の君を都に呼び戻し、元の位に復帰させましょう」
と皇太后に何度もおっしゃった。
「そんなことをすれば世間が批判いたします。帝はご決定を軽々しく変更なさってはいけません。源氏の君は罪の自覚があって自分から都を離れたのです。そういう場合は三年間は都に戻してはならないと、法律で決められています。法律を破った帝だと百年先まで言い伝えられてしまいますよ」
帝が母皇太后に遠慮なさっている間に月日が経っていく。ふたりのご病気は重くなる一方だった。



