野いちご源氏物語 一二 須磨(すま)

 明け方近くになってようやく家来(けらい)たちは()(しず)まった。源氏(げんじ)(きみ)もうとうとなさっていると、夢に不気味(ぶきみ)な生き物が現れた。
竜王(りゅうおう)様がお呼びである。どうして参らぬか」
 恐ろしい声で言いながら、部屋の中を歩きまわっている。
 源氏の君ははっと目を覚まされた。
<海の底に住むという竜王が私を気に入って、あの不気味な生き物に連れてまいれと命じたのだろう。ここは竜王に見つかってしまった。どこか別のところへ移らなければ(わざわ)いが起きる>
 ぞっとして、この須磨(すま)の屋敷から離れたいとお思いになる。