野いちご源氏物語 一二 須磨(すま)

源氏(げんじ)(きみ)須磨(すま)で新年をお迎えになった。
お庭の桜の若木(わかぎ)につぼみがつきはじめるころ、うららかな空をご覧になっては都のことを思い出しておられた。
のんびりした須磨の空気に源氏の君は悲しくなって、泣いてしまわれることが多いの。

内裏(だいり)ではもうすぐ桜の(うたげ)が開かれるだろうか。亡き上皇(じょうこう)様が(みかど)でいらっしゃったころの桜の宴はすばらしかった。東宮(とうぐう)時代の帝はお美しくてお優しくて、私が作った詩をほめてくださったのだった。同じ桜の季節とは思えない今の暮らしが悲しい>
とお思いになる。