野いちご源氏物語 一二 須磨(すま)

 冬になった。
 荒々しく雪が降って空の雰囲気(ふんいき)が恐ろしい。
 源氏(げんじ)(きみ)(きん)弾いて、家来(けらい)に歌を歌わせたり(ふえ)を吹かせたりなさる。まもなく(しず)む月の光が明るく差しこんで、こじんまりとした屋敷の奥の方まで照らしだす。
<私は潔白(けっぱく)だ。帝に対してやましいところなど何もない。しかし、この先どうなっていくのか予想もつかない>
 空の月が寒々しい。あいかわらず眠れなくて、そのまま明け方近くまで起きていらっしゃると、千鳥(ちどり)の鳴き声が聞こえてきた。
「私と一緒に泣いてくれるのか」
 (ひと)(ごと)をつぶやいてから、起き出してお(きょう)をお読みになる。その立派なお姿を拝見していると、家来(けらい)たちは源氏の君をお見捨てすることなどとてもできない。