野いちご源氏物語 一二 須磨(すま)

(むらさき)(うえ)からは切々(せつせつ)としたお返事と、仕立てたお着物が届いた。
「あなたも須磨(すま)で泣いていらっしゃいますか。私はひどく泣いております。どのくらい泣いているかご想像くださいませ」
色合いも仕立てもすばらしいお着物をご覧になって、源氏の君は、
<理想的な妻に育てることができた。ここでは都のしがらみから解放されて時間だけはあるのに、肝心(かんじん)の紫の上がいないとは。やはりひそかに呼び寄せようか>
とお思いになる。
でも、まだ謹慎(きんしん)生活は始まったばかり。
源氏の君は、女君の面影(おもかげ)を振り切るように仏教(ぶっきょう)修行(しゅぎょう)に取り組んでいらっしゃった。

左大臣(さだいじん)()からのお返事には若君(わかぎみ)のことがいろいろと書いてあった。
悲しくはあるけれど、
<また会える日も来るだろう。頼もしい祖父君(そふぎみ)祖母君(そぼぎみ)のところで育てられているのだから、心配ないはずだ>
とお思いになる。
若君に対しては意外とあっさりしておられるのが、いかにも男親(おとこおや)でいらっしゃる。