野いちご源氏物語 一二 須磨(すま)

 花散里(はなちるさと)の君(きみ)も、源氏(げんじ)の君(きみ)が都から離れることをお嘆(なげ)きだった。たまにしかお通いにならない源氏の君だけれど、姫君(ひめぎみ)と姉(あね)女御(にょうご)のお暮らしを支えてくださっていたのだもの。
 入道(にゅうどう)の宮(みや)は、人目(ひとめ)を気にしながら何度も手紙をお送りになった。
<もっと早く、ご出家(しゅっけ)なさる前に、こんなふうに私に同情してくださっていたら。これが私たちの運命なのだろうか>
 源氏の君はつらくお思いになる。
 都を離れるのは三月とお決めになった。少しのお供(とも)だけを連れて、ひっそりと二条(にじょう)の院(いん)を出ていくことになさる。