花散里(はなちるさと)姫君(ひめぎみ)も、源氏(げんじ)(きみ)が都から離れることを(なげ)いていらっしゃった。
源氏の君のご訪問はたまにだったけれど、経済的な支援を受けておられたから、不安になってしまわれるのも当然よね。

入道(にゅうどう)(みや)様は、人目(ひとめ)を気にしながらも何度もお手紙をお送りになる。
源氏の君は宮様からの心のこもったお手紙をお読みになって、
<もっと早く、ご出家(しゅっけ)なさる前に、こんなふうに私に同情してくださっていたら。これが私たちの運命なのだろうか>
と、つらくお思いになる。

都をお離れになるのは三月とお決めになった。
少しのお(とも)だけを連れて、ひっそりと二条(にじょう)(いん)を出ていくことになさる。