源氏の君が謹慎生活の場所として須磨をお選びになった決め手は三つあるの。
一つ目は、静かだけれど都から遠すぎないこと。
二つ目は、摂津国の地方長官が源氏の君に同情的であること。
そして三つ目は、須磨には源氏の君が所有されているご領地があること。
須磨へ行くことをご決心なさると、源氏の君はまず、ご領地のなかからお住まいの場所をお決めになった。
海辺から少し離れた山のなかで、人気がなさすぎて少し怖いくらいのところよ。
そしてその場所に、質素だけれど風流な家を建てはじめられたわ。
源氏の君がご到着なさったときには、中国風の、こじんまりしているけれど風流な家が完成していた。
<こんな事情で来たのでなければ、こういうところに泊まるのもおもしろい経験だろうに>
とお思いになる。
ご領地の管理人をお呼びになって、お庭づくりをお命じになる。
良清という家来が、源氏の君のご希望を管理人に伝えて指示を出していたわ。
しばらくすると美しいお庭ができた。
人工の小川を深くしたり、木を植えたりなさったの。
お住まいが整って、やっとお気持ちは落ち着いたけれど、なんだか現実味がなくて夢のように思っていらっしゃった。
摂津国の地方長官は、もともと源氏の君に親しくお仕えしていた人で、今も源氏の君に同情している。
右大臣様に気づかれないように、こっそりと源氏の君のお世話をしていた。
だから意外と出入りする人は多いのだけれど、やはり源氏の君とは生まれも育ちも違う人たちだもの。
打ち解けてお話し相手ができるような人はいなくて、源氏の君は、
<外国へ来たような気分だ。ここでどうやって年月を過ごそうか>
と悩んでいらっしゃった。
一つ目は、静かだけれど都から遠すぎないこと。
二つ目は、摂津国の地方長官が源氏の君に同情的であること。
そして三つ目は、須磨には源氏の君が所有されているご領地があること。
須磨へ行くことをご決心なさると、源氏の君はまず、ご領地のなかからお住まいの場所をお決めになった。
海辺から少し離れた山のなかで、人気がなさすぎて少し怖いくらいのところよ。
そしてその場所に、質素だけれど風流な家を建てはじめられたわ。
源氏の君がご到着なさったときには、中国風の、こじんまりしているけれど風流な家が完成していた。
<こんな事情で来たのでなければ、こういうところに泊まるのもおもしろい経験だろうに>
とお思いになる。
ご領地の管理人をお呼びになって、お庭づくりをお命じになる。
良清という家来が、源氏の君のご希望を管理人に伝えて指示を出していたわ。
しばらくすると美しいお庭ができた。
人工の小川を深くしたり、木を植えたりなさったの。
お住まいが整って、やっとお気持ちは落ち着いたけれど、なんだか現実味がなくて夢のように思っていらっしゃった。
摂津国の地方長官は、もともと源氏の君に親しくお仕えしていた人で、今も源氏の君に同情している。
右大臣様に気づかれないように、こっそりと源氏の君のお世話をしていた。
だから意外と出入りする人は多いのだけれど、やはり源氏の君とは生まれも育ちも違う人たちだもの。
打ち解けてお話し相手ができるような人はいなくて、源氏の君は、
<外国へ来たような気分だ。ここでどうやって年月を過ごそうか>
と悩んでいらっしゃった。



