源氏の君が都を離れることが世間に知られると、ほとんどの人は、
<信じられない。おかしなことだ>
と思っている。
源氏の君は三歳で母君を、六歳で祖母君を亡くされて、それからずっと内裏で亡き上皇様にかわいがられてお育ちになった。
そのころ帝でいらっしゃった上皇様は、源氏の君を一日中おそばに置いて、源氏の君が何かおっしゃると、にこにこしながら耳を傾けておられたわ。
はじめは最愛の皇子がかわいらしくてそうなさっていたのよ。
でも、源氏の君は貴族たちが見落としているようなことに気づいたり、誰も思いつかないようなよい案を出したりなさるの。
どれも公平で思いやりのあるのご意見だったから、そのうち帝も源氏の君をご信頼なさって、「源氏が言うことなら」と、たいていのことはお認めになるようになった。
だから、上流貴族や中流貴族は、どなたも源氏の君に感謝しておられる。
もっと身分の低い人たちのなかにも、源氏の君のご恩を忘れていない人はたくさんいるのだけれど、まぁ、こんな時代では仕方がないわね。
右大臣様も皇太后様も、気に食わないことをする人がいればすぐに罰をお与えになる。
そんななかで、あえて源氏の君のお見舞いに行こうなんて人はいるはずがないわ。
源氏の君はすべてお分かりになっているけれど、それでも、<つまらない世の中だ>とお思いになる。
<信じられない。おかしなことだ>
と思っている。
源氏の君は三歳で母君を、六歳で祖母君を亡くされて、それからずっと内裏で亡き上皇様にかわいがられてお育ちになった。
そのころ帝でいらっしゃった上皇様は、源氏の君を一日中おそばに置いて、源氏の君が何かおっしゃると、にこにこしながら耳を傾けておられたわ。
はじめは最愛の皇子がかわいらしくてそうなさっていたのよ。
でも、源氏の君は貴族たちが見落としているようなことに気づいたり、誰も思いつかないようなよい案を出したりなさるの。
どれも公平で思いやりのあるのご意見だったから、そのうち帝も源氏の君をご信頼なさって、「源氏が言うことなら」と、たいていのことはお認めになるようになった。
だから、上流貴族や中流貴族は、どなたも源氏の君に感謝しておられる。
もっと身分の低い人たちのなかにも、源氏の君のご恩を忘れていない人はたくさんいるのだけれど、まぁ、こんな時代では仕方がないわね。
右大臣様も皇太后様も、気に食わないことをする人がいればすぐに罰をお与えになる。
そんななかで、あえて源氏の君のお見舞いに行こうなんて人はいるはずがないわ。
源氏の君はすべてお分かりになっているけれど、それでも、<つまらない世の中だ>とお思いになる。



