野いちご源氏物語 一〇 賢木(さかき)

賀茂(かも)神社(じんじゃ)の新斎院(さいいん)のお行列と同じで、新斎宮(さいぐう)のお行列も人々が見物(けんぶつ)にやって来るの。
上品で教養豊かな御息所(みやすんどころ)姫宮(ひめみや)のお行列だもの、楽しみにしている人がたくさんいるわ。
お昼過ぎに内裏(だいり)に到着なさった。
御息所は、亡き父君(ちちぎみ)から「いずれは中宮(ちゅうぐう)に」というご期待を受けて東宮妃(とうぐうひ)になられた方なの。
それが今や、元東宮(とうぐう)未亡人(みぼうじん)
斎宮のお(とも)として内裏に戻ってくることになってしまわれた。
とても悲しいことよ。

御息所は十六歳で東宮妃におなりになって、二十歳のときには夫君(おっとぎみ)を失ってしまわれた。
それから十年、いろいろなことがおありになったわ。
<今日だけは昔のことを思い出さないようにしようと思っていたけれど、悲しい気持ちは抑えきれない>
とお思いになる。
新斎宮は十四歳でいらっしゃる。
今日は特別なお衣装で着飾っていらっしゃるから、いつも以上にお美しい。
ちょっと不吉なくらいのお美しさで、帝は儀式でお別れの(くし)()すとき、思わず動揺なさったわ。