二条の院にお戻りになった源氏の君は、少し冷静にお考えになる。
<あれだけ厳しく拒まれて、どうしてまたお訪ねできようか。こうなったら中宮様に反省していただこう>
それからは中宮様にお手紙も差し上げず、帝や東宮様のところにも上がらず、二条の院に引きこもっておられるの。
でも、中宮様のことを思い出してはたびたびつらくなっていらっしゃる。
ご自分がはじめた意地悪なのに、どうしようもないわね。
<いっそ出家してしまおうか>
ともお思いになるけれど、紫の上がご自分を頼っていらっしゃるお姿を見ると、
<こんなにかわいらしい人を捨てて仏の道に入ることなどできない>
とお覚悟ができない。
中宮様はあれからご体調がすぐれない。
見えすいた源氏の君の作戦に女房はまんまと引っかかって、
「源氏の君がお気の毒でございます」
などと申し上げる。
中宮様も、東宮様の後見のことをお考えになると、源氏の君がこのままご自分から離れていかれるのは避けたいとお思いだった。
<万が一にも出家などをされては困る。出家した人は東宮様の後見ができないきまりなのだから>
と、したたかに損得勘定をして、ある決意を固めていかれる。
<寝室に忍びこまれるようなことが続けば、いつかは世間の噂になってしまうだろう。源氏の君が絶対に私に手出しできなくなる方法がひとつだけある。そのためには中宮の位を捨てなければならないが。亡き上皇様は、私や東宮様をご心配なさって、私に中宮の位をくださった。しかし今は右大臣一族の時代だ。皇太后に弱みを握られたら、どのような恐ろしい目に遭うか>
中宮様はご出家を決意なさったの。
尼姿におなりになる前に東宮様にお会いしておきたいと、ひそかに内裏に上がられた。
<あれだけ厳しく拒まれて、どうしてまたお訪ねできようか。こうなったら中宮様に反省していただこう>
それからは中宮様にお手紙も差し上げず、帝や東宮様のところにも上がらず、二条の院に引きこもっておられるの。
でも、中宮様のことを思い出してはたびたびつらくなっていらっしゃる。
ご自分がはじめた意地悪なのに、どうしようもないわね。
<いっそ出家してしまおうか>
ともお思いになるけれど、紫の上がご自分を頼っていらっしゃるお姿を見ると、
<こんなにかわいらしい人を捨てて仏の道に入ることなどできない>
とお覚悟ができない。
中宮様はあれからご体調がすぐれない。
見えすいた源氏の君の作戦に女房はまんまと引っかかって、
「源氏の君がお気の毒でございます」
などと申し上げる。
中宮様も、東宮様の後見のことをお考えになると、源氏の君がこのままご自分から離れていかれるのは避けたいとお思いだった。
<万が一にも出家などをされては困る。出家した人は東宮様の後見ができないきまりなのだから>
と、したたかに損得勘定をして、ある決意を固めていかれる。
<寝室に忍びこまれるようなことが続けば、いつかは世間の噂になってしまうだろう。源氏の君が絶対に私に手出しできなくなる方法がひとつだけある。そのためには中宮の位を捨てなければならないが。亡き上皇様は、私や東宮様をご心配なさって、私に中宮の位をくださった。しかし今は右大臣一族の時代だ。皇太后に弱みを握られたら、どのような恐ろしい目に遭うか>
中宮様はご出家を決意なさったの。
尼姿におなりになる前に東宮様にお会いしておきたいと、ひそかに内裏に上がられた。



