野いちご源氏物語 一〇 賢木(さかき)

ところで、おととしから去年にかけて、伊勢(いせ)神宮(じんぐう)斎宮(さいぐう)と、賀茂(かも)神社(じんじゃ)斎院(さいいん)が新しい方たちになったこと、覚えている?
(みかど)の交代にともなって、新斎宮は六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)姫宮(ひめみや)、新斎院は上皇(じょうこう)様の内親王(ないしんのう)がおなりになったのよね。

斎宮も斎院も、帝の交代か、ご両親の不幸があったときには交代なさるのがきまり。
斎院の内親王は、このたびお父君(ちちぎみ)であられる上皇(じょうこう)様がお亡くなりになったから、斎院をお()りになることになったの。
新斎院には朝顔の姫君(ひめぎみ)が選ばれたわ。

源氏(げんじ)(きみ)は今も朝顔の姫君を恋人にしたいと願っておられたから、手の届かないところへ行ってしまわれることを残念にお思いになる。
さすがの源氏の君も、神様にお仕えしている姫君に手は出せないものね。
それでもお手紙だけは熱心に送っておられる。
源氏の君にとっては、政治の変化よりも、女性との関係の変化の方が気にかかっておられるみたい。