野いちご源氏物語 〇九 葵(あおい)

懐妊(かいにん)中の源氏(げんじ)(きみ)の奥様は、もともと何かの見物(けんぶつ)なんてお好きじゃないの。
浮ついたところのない、お手本のような姫君(ひめぎみ)でいらっしゃるのだもの。
でも若い女房(にょうぼう)たちは、それではつまらないわよね。
「今日のお行列は、だれもかれも源氏の君を目当てに見にいくのですよ。奥様をお屋敷に残して、私たち女房だけで行っても楽しくありませんわよね」
なんて、こそこそ話しているのを奥様の母君(ははぎみ)がお聞きになった。

母君は、
「せっかくのお祭りですよ。今日はご気分もよろしいようだから、見物にお出かけになってはいかが。女房たちがつまらなそうにしていましたよ」
と奥様におすすめなさる。
女房たちや、乗り物にお(とも)する家来たちにも、急いで準備をおさせになったわ。